平成28年・自ら経営する会社の虚偽の在職証明書で他の外国人の在留を助け不許可|刑事処分がなくても許可されなかった事例(D類型不許可第3事例)
2026/08/06
事例の概要
他の外国人の在留手続に関わる行為は、刑事処分がなくても重く見られます。平成28年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)不許可第3事例です。違反態様は偽装滞在幇助、端緒は当局の摘発で、在日約12年8月です。違反期間の欄は空欄で、刑事処分の欄は「無」、被退去強制歴の記載もありません。在留希望の理由は、会社経営の継続と、外国籍の恋人(在留資格「留学」)との婚姻でした。事例集は、外国人に不正に在留期間更新許可を受けさせるため、自己の会社に在職しているという内容虚偽の在職証明書等を発行したことを不許可の事情として挙げています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 消極要素・第2の3(イ):他の外国人の不法就労や在留資格の偽装に関わる行為を、特に考慮する消極要素とします。本事例はこれに正面から当たります。
- 消極要素・第2の6:退去強制理由となった事実の反社会性の程度に応じます。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。
- 積極要素:会社経営は、第2の3が積極要素とする本邦への貢献や不可欠な役割に当たると評価されていません。恋人との関係も婚姻に至っておらず、第2の2の家族関係には乗りません。
- 第2の9の出頭申告には当たりません(端緒は摘発)。
結論を分けた一線はどこか
第3の枠組みでは、積極要素が消極要素を明らかに上回る必要があります。本事例は刑事処分がないまま行為の性質で不許可です。第2の3(イ)に当たる行為が、在留制度の土台に関わるものとして重く見られたと読めます。同じ平成28年D類型の許可第1事例は、在留資格を失った原因が更新申請の失念で、他人の在留に関わる行為はありませんでした。刑事処分の有無ではなく行為の性質が分かれ目と考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分の欄が「無」である点が読みどころです。2点を述べます。
第1に、故意・過失の位置づけです。書類の内容が事実と異なることや、それが他人の在留手続に用いられることを本人がどこまで認識していたかは、刑事事件なら故意として問われます。他方、入管実務では退去強制事由の判断に故意・過失は要件でないという運用が長く踏襲されてきました。責任主義の射程を問うこの論点について、松村大介弁護士は現に訴訟を係争中です。認識の有無は違反審査の段階から主張すべき事柄です。
第2に、経営者側の資料管理です。従業員の在留手続に会社の書類が用いられる場面では、在職の実体を示す記録を残すことが後の疑いを避けます。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋で、この類型に許可の余地がないことを示しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。同じ結果をお約束するものではありませんが、傾向は出発点にすぎません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に至った女性の事案では、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を正面から問う訴訟を係争中です。この事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得しており、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。
卸業の依頼者が取り込み詐欺の被害に遭った事案では、刑事告訴を端緒に相手方を特定し、7,500万円の解決金を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
会社を経営しておられる方の場合、従業員の在留手続に関わる書類の扱いが自らの在留にも及びます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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