平成28年・入院中に更新申請を失念し重度の意識障害、在日約51年7月で在留特別許可|定住者(3年)が認められた事例(D類型許可第3事例)
2026/08/06
事例の概要
入院している間に在留期間の更新を申請できなかった、という事例です。平成28年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)許可第3事例で、結論は許可です。違反態様は不法残留、端緒は出頭申告で、在日約51年7月・違反約10月です。刑事処分はなく、被退去強制歴の記載もありません。在留希望の理由は本邦で病気治療を受けたいことでした。特記事項には、入院中に在留期間更新許可申請を失念したこと、重度の意識障害があり退院が見込まれないことが記されています。許可内容は定住者(3年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 積極要素・第2の7(1):本邦での治療を必要とすることは、人道上の配慮として特に考慮する積極要素です。退院が見込まれない状態は、出国そのものが困難であることも意味します。
- 積極要素・第2の9:不法滞在を申告するため自ら出頭したこと。
- 積極要素・その他:在日約51年7月という生活の基盤。
- 消極要素・第2の5と第2の6:不法在留約10月と不法残留。期間は短く、どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。第2の3の素行不良に当たる事情の記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。本事例では、療養の必要性と半世紀を超える在留の基盤が並び、消極要素は約10月の不法在留にとどまります。許可された在留資格が定住者(3年)と長めであることも、療養が短期で終わらないという見立てに対応していると読めます。同じ平成28年D類型の不許可第2事例は、在日約19年3月と本邦での期間が長い一方、他人名義の旅券で不法入国し偽装日系人として在留していた事案でした。
弁護士のコメント
刑事処分がない事例ですので、2点を述べます。
第1に、医療上の事情の立証です。診断書、入院の記録、治療の見込み、本国での治療の可否を示す資料が中心になります。第2の7(1)が挙げるのは本邦での治療の必要性ですので、病名だけでなく、本邦で治療を続ける必要がある理由まで示す必要があります。
第2に、本人が意思を表明しにくい場合の手続です。出頭や申請を家族や代理人が支える体制を早く整え、違反調査の段階から事情を記録に残しておく必要があります。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表されるのは各年20件前後で、事例集は網羅的なものではありません。自分の事情に近い許可例が載っていないことは、結論を予告するものではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
国際刑事事件、裁判員裁判の対象事件、世界的に報道された事件への対応実績があり、中国籍の方の重大事件にも多数対応しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
療養が必要な方の在留の問題では、医療上の事情を客観的な資料として残すことが出発点になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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