平成28年・窃盗の前科1件と婚姻手続の未了で不許可|1歳と0歳の子がいても許可されなかった事例(C類型不許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
日本で生まれた乳幼児が2人いても許可に至らないことがあります。平成28年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のC類型(外国人家族の場合)不許可第1事例です。違反態様は不法残留、端緒は当局の摘発で、在日約7年1月・違反約10月です。子は2人とも本邦で出生した後に在留資格を取得しておらず、判定時に1歳と0歳でした。事例集は、窃盗による前科が1件あること、外国籍の恋人(在留資格「定住者」)との婚姻手続に及ばなかったことを不許可の事情として挙げています。刑事処分の欄と被退去強制歴の記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 積極要素・第2の2(2):別表第二の在留資格(永住者・特別永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者)を有する者との家族関係は特に考慮されます。相手は定住者ですが婚姻手続に至っておらず、この要素に乗せられませんでした。
- 積極要素・第2の2(3):子は1歳と0歳で、本邦の初等中等教育機関での教育という事情はありません。
- 消極要素・第2の3:窃盗の前科1件。(ア)から(エ)の列挙には直接当たりませんが、素行面の消極要素として働きます。
- 消極要素・第2の6:不法残留。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。なお第2の9の出頭申告には当たりません(端緒は摘発)。
結論を分けた一線はどこか
第3の枠組みでは、積極要素が消極要素を明らかに上回る必要があります。天秤が動かなかったのは、違反期間が約10月と短いのに、子の本邦での生活が始まったばかりで、素行と身分関係の両面に穴があったためと読めます。同じ平成28年C類型の許可第1事例は、家族全員で出頭し、子は9歳8月で生涯を本邦で過ごしていました。期間の短さは有利に働かず、子が積み上げた年月と身分関係の整備が分かれ目と考えられます。
弁護士のコメント
2点を述べます。
第1に、窃盗の前科です。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とし、全部執行猶予は除外されます。前科の内容は事例集の記載からは判明しませんが、前科の存在自体が素行面の消極要素として残ります。刑事段階で不起訴処分を獲得できていれば、素行の評価をここまで悪くせずに済んだ余地があったと考えられます。財産犯では被害の回復が不起訴の可否を左右します。
第2に、婚姻手続です。相手が定住者ですから、婚姻が成立していれば第2の2(2)に乗る可能性がありました。手続に障害があるときこそ、早い段階から戸籍や領事の手続を進める必要があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は網羅的ではなく各年20件前後の抜粋です。不許可事例に近い事情が並んでいても、結論を決めるわけではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が続く類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、取調べへの徹底した対応と不当な取調べへの抗議により、全件について不起訴処分を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
刑事事件と在留の問題は、別々のものではなく一本の流れとして考える必要がございます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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