平成28年・入管法違反で懲役2年6月・執行猶予3年、逮捕後に成立した婚姻約1月で不許可|不法入国で在日約12年6月の事例(B類型不許可第3事例)
2026/08/06
事例の概要
身柄を拘束された後に婚姻が成立した事案は、どう評価されるのか。出入国在留管理庁が平成29年3月に公表した平成28年分の事例集のB類型(配偶者が正規に在留する外国人の場合)不許可第3事例が手がかりです。違反態様は不法入国、端緒は警察逮捕で、在日期間と違反期間はいずれも約12年6月です。婚姻期間は約1月、夫婦間に子はありません。配偶者の在留資格は原典に記載がありません。刑事処分は、入管法違反により懲役2年6月、執行猶予3年の判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。事例集は、逮捕後に婚姻が成立したものと記載しています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行前の判断です。
- 消極・第2の6:入管法違反による有罪判決。もっとも全部執行猶予付きですので、24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑。全部執行猶予は除かれます)には当たりません。どの号に当たるかは事案ごとに条文に当たって確認する必要があります。
- 消極:端緒が警察逮捕のため、第2の9の出頭申告は働きません。
- 消極・第2の5:約12年6月の不法在留期間。
- 積極になりきれなかった第2の2(2):配偶者の在留資格は記載がなく、別表第二の枠に入るかどうかは判明しません。加えて婚姻期間が約1月で、逮捕後の成立です。同項が前提とする家族関係の実体は認めがたい状態です。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。同年B類型の許可第4事例は、同じ不法入国で違反期間は約17年11月と本件より長いのですが、自ら出頭し、配偶者が永住者で、刑事処分もありませんでした。違いは、逮捕という端緒、有罪判決、身柄拘束後に成立した婚姻です。身柄拘束の後の婚姻は在留を求めるための行動と見られやすく、積極要素としての重みが乏しくなると考えられます。
弁護士のコメント
第1に、刑の重さと退去強制事由の関係です。本件の懲役2年6月は全部執行猶予付きで、入管法24条4号リには当たりません。それでも不法入国という退去強制事由は残ります。執行猶予を得れば在留できるという理解が成り立たない構造であり、目標は起訴前の不起訴処分に置くべきものでした。不起訴を獲得できていれば、第2の6の消極評価を1つ減らせた余地はあったと考えられます。
第2に、婚姻の時期です。逮捕後に婚姻を成立させても、相当期間の共同生活という実体は示せません。婚姻を急ぐより、それまでの生活の共同性を示す資料を集める方が意味を持つ場面があります。
第3に、初動です。逮捕直後の72時間の供述が、刑事と入管の双方を左右します。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
刑事処分と逮捕が重なる事案は公表事例で不許可が続きますが、事例集は各年20件前後の抜粋です。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者の事案では、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しております。
特殊詐欺の出し子とされた20代の女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在などを総合的に主張し、不起訴処分を獲得しております。
当事務所は、不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。多くの罪名では、執行猶予判決を得ても結果として退去強制に至るためです。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
逮捕から始まる事案では、刑事段階の目標設定が入管手続の見通しをそのまま決めることになります。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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