平成28年・売春防止法違反等で懲役1年6月・執行猶予3年、仮放免中に違法店を経営して不許可|日本人配偶者がいた事例(A類型不許可第2事例)
2026/08/06
事例の概要
出頭申告でも、素行の消極要素が重なれば結論は動きません。平成28年分の事例集(出入国在留管理庁が平成29年3月に公表)のA類型(配偶者が日本人の場合)不許可第2事例です。違反態様は不法残留、端緒は出頭申告で、在日期間は約11年4月、うち違反期間は約8年4月、婚姻期間は約1年、子はありません。刑事処分は、売春防止法違反及び風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反により、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金20万円の判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。事例集は、婚姻・同居の実態への疑義と、仮放免中に違法なエステ店を経営して逮捕されたことを挙げています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行前の判断です。
- 消極・第2の3(エ):自ら売春を行い又は他人に売春を行わせる等、社会秩序を著しく乱す行為。
- 消極・仮放免中の条件違反:仮放免中の逃亡や条件違反は消極要素です。仮放免中の営業と逮捕は、ここに直結します。
- 消極・第2の5:約8年4月の不法在留期間。
- 消極・第2の6:入管法24条4号ハは、売春に直接関係がある業務に従事する者を、刑に処せられたことを要件とせずに退去強制事由としています。
- 積極・第2の9:出頭申告。もっとも上記の重なりに埋もれています。婚姻約1年で子がなく同居の実態も疑われ、第2の2(1)(ウ)も実質を持ちません。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3が求めるのは、積極要素が消極要素を明らかに上回ることです。同年A類型の許可第3事例は、違反期間が約14年6月と本件よりはるかに長いのに許可されました。本件は違反期間がより短いにもかかわらず、素行不良と仮放免中の条件違反が重なり、婚姻の実態も疑われています。天秤を傾けたのは在留期間の長短ではなく、素行に関する評価だと読めます。
弁護士のコメント
第1に、効いているのは刑の重さより罪名の性質です。本件の懲役1年6月は全部執行猶予付きで、入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑。全部執行猶予は除かれます)には当たりません。しかし4号ハは、売春に直接関係がある業務への従事を、刑に処せられたことを要件とせずに退去強制事由とします。執行猶予が付いたから残れるという理解が通らない典型です。もっとも、刑事段階で不起訴処分を獲得できていれば、素行不良の評価を軽くできた余地はあったと考えられます。
第2に、仮放免中の行動です。条件違反は独立した消極要素であり、本人の判断の結果として現れます。仮放免の条件と就労の制限は、早い段階で正確に確認しておく必要があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例に不許可が並ぶ類型であっても、それが結論を決めるものではありません。事例集は各年20件前後の抜粋にすぎません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が続く類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者の事案では、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しております。裁判員裁判対象事件や報道された重大事件にも多数対応しております。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議により、全件について不起訴処分を獲得しております。
当事務所は、不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。多くの罪名では、執行猶予判決を得ても結果として退去強制に至るためです。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
素行に関する消極要素が問題となる事案では、刑事段階での目標設定と仮放免中の行動が、後の見通しを大きく左右いたします。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
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