平成28年・不法入国で在日約9年4月すべてが違反期間でも在留特別許可|日本人配偶者との婚姻約1年・未成年の子1人の事例(A類型許可第4事例)
2026/08/06
事例の概要
婚姻からまだ1年、在日期間の全部が不法入国による違反期間という事案でも許可が出ています。出入国在留管理庁が平成29年3月に公表した平成28年分の事例集のA類型(配偶者が日本人の場合)許可第4事例です。違反態様は不法入国、端緒は出頭申告です。在日期間は約9年4月で、違反期間も約9年4月です。日本人配偶者との婚姻期間は約1年、夫婦間に未成年の子が1人います。刑事処分はなく、被退去強制歴の記載もありません。許可内容は在留資格「日本人の配偶者等」(1年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前の判断ですが、当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。
- 積極・第2の2(1)(ウ):日本人と法的に婚姻し、夫婦間に子があるなど婚姻が安定かつ成熟していること。婚姻約1年は短いものの、未成年の子1人が例示を支えます。
- 積極・子の利益:家族とともに本邦で生活する子の利益の保護の必要性。明示は令和6年3月改定です。
- 積極・第2の9:不法滞在を申告するため自ら官署に出頭したこと。
- 消極・第2の5:約9年4月の不法在留期間。令和6年改定で明示的な消極要素とされましたので、現在なら評価は厳しくなり得ます。
- 消極・第2の6:不法入国という退去強制理由(どの号に当たるかは事案ごとに条文に当たって確認する必要があります)。
素行不良(第2の3)を基礎づける記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
同じ平成28年A類型には、婚姻約1年3月で子のない許可第3事例もあります。本件は婚姻期間がさらに短い約1年ですが、未成年の子がある点で積極要素が厚くなっています。他方、不許可第4事例は婚姻期間が同じ約1年でしたが、端緒が警察逮捕で、偽造在留カードの提示による有罪判決を受け、婚姻は逮捕後に成立したものでした。同じ婚姻約1年でも、子の存在、素行の消極要素、婚姻の成立時期が結論を分けたと読めます。
弁護士のコメント
第1に、婚姻期間が短い事案では、子の存在が積極要素の中心になります。もっとも、出生の事実だけでなく、同居して現に養育していることを示す資料が要ります。住民票、保育や健診の記録、家計の一体性が分かる資料などが手がかりです。
第2に、出す段階です。手続は違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)、法務大臣への異議申出と進み、注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しないとしています。違反審査の段階で出しておく必要があります。
第3に、初動の供述は軽視できません。不法入国の経緯は、その後の反社会性の評価に影響します。依頼者ご本人のために動く立場の通訳を確保する意味は、この段階でこそ大きいものです。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例は、その年に扱われた事案から一部を抜き出したものにすぎません。同じ組合せの許可例が見えないことは、結論の先取りにはなりません。当事務所が扱った不法就労助長の事案では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
不法就労助長罪に問われて強制退去の危機に直面した女性の事案では、退去強制事由に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を問う訴訟を進めております。この事件では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得しております。
在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された相談者の事案では、当局との交渉によって婚姻・認知を成立させ、過去の許可事例を分析して1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
当事務所は、不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。多くの罪名では、執行猶予判決を得ても結果として退去強制に至るためです。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
婚姻期間が短い事案では、お子さんを現に養育している状況をどこまで資料で示せるかが結論を左右いたします。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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