平成29年・自己経営の飲食店で「短期滞在」の外国人を稼働させ罰金50万円の略式命令、当局摘発で不許可|在日約14年でも許可されなかった事例(D類型不許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
自分の店で誰を働かせたかが結論を決めた事例です。平成29年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)不許可第1事例です。違反態様は不法就労助長、端緒は当局の摘発で、在日期間は約14年です。違反期間の欄は原典で空欄です。刑事処分は、入管法違反により罰金50万円の略式命令でした。被退去強制歴の記載はありません。在留希望の理由は、本邦に生活基盤があることでした。事例集は、自己の経営する飲食店で在留資格「短期滞在」等の外国人をホステスとして稼働させたこと、及びこの刑事処分を不許可の事情に挙げています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は令和5年改正入管法の施行(令和6年6月10日)前・改定前の判断です。
- 消極要素・第2の3(イ):他の外国人の不法就労又は在留資格の偽装に関わる行為は、特に考慮する消極要素です。自ら経営する店での就労は、この(イ)の中心に位置します。
- 消極要素・第2の6:不法就労助長行為は、入管法24条3号の4が退去強制事由を定めます。
- 消極要素・素行:罰金50万円の略式命令という刑事処分。
- 積極要素・その他:在日約14年という生活の基盤。第2の9の出頭申告には当たりません(端緒は当局の摘発)。
- なお事例集は売春に言及していません。第2の3(エ)(売春関係)とは別の消極要素として整理されます。
結論を分けた一線はどこか
第3では、積極要素が消極要素を明らかに上回る必要があります。本事例の積極要素は生活の基盤のみで、他の外国人の就労に関わる行為と刑事処分が並びました。同じ平成29年D類型の許可第8事例も理由は本邦の生活基盤ですが、在日約48年6月で違反は約3月、原因は疾病による更新申請の失念であり、自ら出頭しています。同じ理由でも、素行面の消極要素の有無で結論は反対に振れます。
弁護士のコメント
2点を述べます。
第1に、故意・過失の要件論です。相手の在留資格や就労の可否を確認したかは、刑事事件では故意・過失として検討されます。他方、入管実務では退去強制事由の判断に故意・過失を要件としない運用が長く踏襲されてきました。責任主義の射程を行政処分にどこまで及ぼすかという論点であり、松村大介弁護士が現に訴訟で争っているところです。
第2に、刑事処分の位置づけです。略式命令による罰金は入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑)には当たりません。もっとも24条3号の4は行為そのものを退去強制事由とする構造ですので、不起訴処分を得ても該当性の問題が残ります。だからこそ行為と認識を刑事段階から争う意味があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
不法就労助長を理由とする公表事例は、平成29年分でも不許可が並びます。もっとも事例集は各年20件前後の抜粋であり、許可の余地がないことを示すものではありません。当事務所は、不法就労助長に問われた事案で在留特別許可を獲得しており、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。公表事例の傾向は出発点にすぎません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
不法就労助長罪に問われて強制退去の危機に至った女性の事案では、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を正面から問う訴訟を係争中です。この事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得しており、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至りますので、起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
外国人を雇う立場に立つとき、確認の過程を記録に残すことがご自身を守る資料になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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