平成29年・病気により単独での日常生活が困難、在日約37年2月で在留特別許可|出頭申告で永住者の配偶者等(3年)を得た事例(D類型許可第7事例)
2026/08/06
事例の概要
健康上の事情が正面から考慮された事例です。平成29年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)許可第7事例で、結論は許可です。違反態様は不法残留、端緒は出頭申告です。在日期間は約37年2月、違反期間は約27年2月です。刑事処分の欄は「無」で、被退去強制歴の記載はありません。在留希望の理由は、本邦で病気の治療を受けたいこと、本邦に生活基盤があることでした。特記事項には、病気により単独での日常生活が困難であることが記されています。症状の内容には立ち入りません。許可内容は永住者の配偶者等(3年)で、身分関係を基礎とする在留が認められたことがうかがえます。配偶者の在留資格の欄に記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は令和5年改正入管法の施行(令和6年6月10日)前・改定前の判断です。
- 積極要素・第2の7(1):難病等により本邦での治療を必要とすることは、人道上の配慮として特に考慮される積極要素です。単独での日常生活が困難という記載は、この要素の中核に触れます。
- 積極要素・第2の9:自ら出頭して不法滞在を申告したこと。
- 積極要素・その他:約37年2月にわたる在留と、その間に築かれた生活の基盤や支援の関係。
- 消極要素・第2の5:約27年2月という不法在留の長さ。長期化が明示的な消極要素とされたのは令和6年改定であり、同じ事情が現在ではより重く評価される可能性があります。
- 消極要素・第2の6:不法残留。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。
結論を分けた一線はどこか
第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。27年を超える不法在留は軽い事情ではありませんが、本邦での治療と日常生活の支援を必要とする状態が、これを上回ったと読めます。同じ平成29年D類型の不許可第8事例も本邦の生活基盤を理由に挙げていますが、自己の経営する会社で不法残留者等を雇用し、罰金50万円の略式命令を受けて不許可でした。人道上の配慮に当たる事情の有無と素行面の差が結論を分けています。
弁護士のコメント
刑事処分のない事例です。2点を述べます。
第1に、健康上の事情の立証です。診断書、通院や治療の経過、日常生活で誰がどのような支援をしているかを示す資料が中心になります。本国で同等の治療や介護を受けられるかという点も、争点になり得ます。尊厳に配慮しつつ、必要な範囲で客観的な記録を整えます。
第2に、提出の時期です。ガイドライン注4は退去強制令書の発付後の事情変更を原則として考慮しません。健康状態は変化しますので、違反審査から口頭審理までの段階で、その時点の状態を裏付けておくことが大切です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集に載るのは各年20件前後です。似た事情の許可例がないとしても、可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
特殊詐欺の出し子とされた20代の女性については、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至りますので、起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
治療や介護を必要とされる状況は、客観的な記録によって初めて手続に反映されます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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