平成29年・不法残留約5月・婚姻約4年4月でも不許可|被退去強制歴1回と同居実態への疑義が重なった事例(B類型不許可第4事例)
2026/08/06
事例の概要
違反期間が約5月しかなく、婚姻期間は約4年4月に及ぶ。数字だけを見れば有利に思える構成でも、不許可となることがあります。平成29年分事例集のB類型不許可第4事例です。
違反態様は不法残留、端緒は出頭申告です。在日期間は約10年7月で、うち違反期間は約5月です。つまり10年余りの在留のほとんどは在留資格を有していたことになります。婚姻期間は約4年4月で、夫婦間に子はありません。刑事処分はなく、被退去強制歴が1回あります。配偶者の在留資格は事例集に記載がありません。不許可の事情は、婚姻・同居の実態への疑義と被退去強制歴1回です。本件は令和5年改正入管法及び現行ガイドラインの適用前の判断です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の9(積極):不法滞在の事実を申告するため自ら出頭したこと。
- 第2の5(消極として軽い):不法在留期間は約5月にとどまり、この年のB類型では最も短い部類です。
- 第2の6(消極):被退去強制歴1回。過去に送還を受けながら再び違反状態に至っている点が評価されます。
- 第2の2(2)(当たらないと判断された):婚姻約4年4月は相当期間に及びますが、この要素は(1)に準じるものを求め、(1)(ウ)は共同生活の実体を前提とします。実態に疑義がもたれた本件は入口で外れ、配偶者の在留資格の記載もありません。
素行不良(第2の3)に当たる記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
同年のB類型許可第4事例と比べると、期間の数字が結論を決めないことがはっきりします。そちらは違反期間が約3年7月で本件の7倍以上、婚姻期間は約9月で本件の5分の1程度でしたが、配偶者と子がいずれも「定住者」の在留資格を有し、夫婦間に未成年の子がいて、許可されています。
本件で天秤が傾かなかったのは、婚姻・同居の実態が認められなかったこと、そして被退去強制歴があったことです。違反期間の短さは積極方向に働く事情ではありますが、家族関係の積極要素が入口で外れてしまうと、それを補うには足りなかったと読めます。
弁護士のコメント
第1に、同居の実態をどう示すかです。婚姻期間が4年を超えていても、実態が疑われれば家族関係の積極要素は働きません。住民票の記載は出発点にすぎず、賃貸借契約や光熱費の名義、家計の一体性を示す資料、生活の連続性を示す記録を、時期の切れ目がないように積み上げる作業が要になります。必要な資料は事案ごとに異なります。
第2に、被退去強制歴がある場合の水準です。過去に送還歴があると、同じ家族関係でも求められる立証の水準が上がります。違反審査の段階から、送還後の経緯、再度来日した理由、現在の生活の基盤を具体的に示しておく必要があります。ガイドライン注4により、退去強制令書の発付後は事情変更が原則として考慮されませんので、順序を誤ると主張の機会自体を失います。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例は行政自身が許可相当と判断した先例ですが、掲載は各年20件前後にとどまり、その全部ではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。傾向を必ず覆せると申し上げるものではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
観光目的で来日された方が日本人女性との間にお子さんを授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、当局との交渉により婚姻と認知を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在等を主張し、不起訴処分を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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