平成29年・入管法違反で懲役3年・執行猶予4年、婚姻約1月で不許可|不法入国から約26年8月が経過していた事例(B類型不許可第3事例)
2026/08/06
事例の概要
婚姻期間が約1月と記録された事例です。平成29年分事例集のB類型(配偶者が正規在留外国人の場合)不許可第3事例です。
違反態様は不法入国、端緒は警察逮捕です。在日期間は約26年8月で違反期間も同じですから、四半世紀を超えて在留資格のない状態が続いていました。婚姻期間は約1月で、夫婦間に子はありません。刑事処分は、入管法違反により懲役3年、執行猶予4年の判決です(懲役は原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。配偶者の在留資格は記載がなく、被退去強制歴も判明しません。不許可の事情は、実態への疑義と刑事処分です。本件は令和5年改正入管法及び現行ガイドラインの適用前の判断です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の5(消極):約26年8月の不法在留。この年のB類型で最も長い期間です。
- 第2の6(消極):不法入国そのものが退去強制事由に当たります(具体的にどの号かは条文に当たって確認する必要があります)。加えて懲役3年という量刑が示すとおり、反社会性が重く評価されたと読めます。
- 第2の9(働かない):端緒は警察逮捕です。
- 第2の2(2)(当たらないと判断された):婚姻期間は特別審理官の判定までの期間ですから、約1月という記録は、婚姻が手続の進行と近接した時期に成立したことをうかがわせます。実態にも疑義がもたれ、子もおらず、配偶者の在留資格の記載もありません。
結論を分けた一線はどこか
同年のB類型許可第1事例は、同じ不法入国で在日約17年9月・違反約17年9月でしたが、端緒は出頭申告、婚姻約1年5月で夫婦間に未成年の子があり、配偶者は「永住者」、子は「永住者の配偶者等」で、許可されています。
本件との差は、端緒、家族関係の中身、刑事処分の有無です。滞在が長いこと自体は許可事例でも共通しており、天秤を傾けたのはそれ以外の要素だったと読めます。ガイドライン第3の下では、婚姻が手続の進行後に成立した家族関係は、積極要素として評価されにくい構造にあると考えられます。
弁護士のコメント
第1に、執行猶予でも在留は守れないという点です。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、全部執行猶予は除かれます。本件の刑はこの号に当たりません。それでも手続が進んだのは、不法入国それ自体が別に退去強制事由となるためです。刑事処分の回避だけでは足りず、在留特別許可の獲得までを視野に入れた組立てが必要です。
第2に、婚姻の時期です。身柄を拘束された後や手続が進んだ後に婚姻が成立する事案は少なくありません。時期そのものは動かせませんから、交際の経緯、同居や共同生活の準備がいつ始まったか、双方の家族が関与していたかを、客観的な資料で示す必要があります。ガイドライン注4により、退去強制令書の発付後は事情変更が原則として考慮されません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
検索して同じ事情の許可例が出てこないとき、可能性がないと結論づける必要はありません。掲載は各年20件前後にとどまり、その年の判断を網羅していないからです。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された事案では、証拠の徹底した分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しております。
観光目的で来日された方が在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案では、一旦不受理とされた婚姻と認知を当局との交渉により成立させ、過去の許可事例を分析した上で1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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