平成29年・不法入国約15年4月・被退去強制歴2回で不許可|婚姻約8月の実態に疑義がもたれた事例(B類型不許可第2事例)
2026/08/06
事例の概要
自ら出頭し、刑事処分もない。それでも不許可となった事例です。平成29年分事例集のB類型(配偶者が正規在留外国人の場合)不許可第2事例です。
違反態様は不法入国、端緒は出頭申告です。在日期間は約15年4月で、違反期間も同じですから、来日から判定まで在留資格のない状態でした。婚姻期間は約8月で、夫婦間に子はありません。刑事処分はなく、被退去強制歴が2回あります。配偶者の在留資格は事例集に記載がありません。不許可の事情として挙げられているのは、婚姻・同居の実態への疑義と被退去強制歴2回です。本件は令和5年改正入管法及び現行ガイドラインの適用前の判断です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の9(積極):不法滞在の事実を申告するため自ら出頭したこと。本件にもこの要素はあります。
- 第2の2(2)(判断の前提を欠く):この要素が特に考慮するのは別表第二の在留資格者との家族関係です。本件は配偶者の在留資格が記載されていないため、そこに当たるかを事例集からは確認できません。加えて婚姻約8月で子もなく、準用される(1)(ウ)の相当期間の共同生活という点でも薄い形です。
- 第2の5(消極):約15年4月の不法在留。
- 第2の6(消極):不法入国という態様と、被退去強制歴2回という反復性。
- 素行不良(第2の3)に当たる記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
同年のB類型許可第2事例と並べると輪郭が見えます。そちらも不法入国で端緒は出頭申告、在日約15年2月・違反約15年2月とほとんど同じ期間構成でしたが、婚姻約2年1月で夫婦間に未成年の子があり、配偶者と子はいずれも「定住者」で、許可されています。
差は3点に整理できます。配偶者の在留資格が別表第二であることが明らかであったかどうか、夫婦間に子がいたかどうか、そして被退去強制歴があるかどうかです。期間の数字はほぼ同じですから、天秤を傾けたのはこれらの事情だと読めます。
弁護士のコメント
第1に、B類型の初期対応です。ご相談の最初の段階で確認したいのは、配偶者がどの在留資格でどれだけの期間在留しているかです。別表第二の在留資格であればガイドライン第2の2(2)の積極要素に直結し、別表第一であれば別の組立てが必要になります。本件のように配偶者の在留資格が事例集に記録されていない事案は、その点が判断材料として前に出なかったことを示している可能性もあります。
第2に、婚姻の実態と時期です。婚姻期間は特別審理官による判定までの期間ですから、約8月という数字は婚姻が手続の進行と近い時期に成立したことをうかがわせます。この場合、当局は婚姻の動機に注意を向けます。交際の経緯、同居の開始時期、家計の一体性を、時系列に沿って客観資料で示す準備が要になります。加えて被退去強制歴があると、同じ事情でも求められる立証の水準は上がります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集に載っていないことは、許可されていないことを意味しません。掲載は各年20件前後の抜粋にとどまります。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。傾向は出発点であり、結論ではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
観光目的で来日された方が日本人女性との間にお子さんを授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、一旦不受理とされた婚姻と認知を憲法的観点から当局と交渉して成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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