平成29年・配偶者と子が「定住者」で在留特別許可|不法入国約15年2月・婚姻約2年1月・出頭申告の事例(B類型許可第2事例)
2026/08/06
事例の概要
許可される在留資格は、家族の在留資格に対応して決まる傾向があります。平成29年分事例集のB類型(配偶者が正規に在留する外国人の場合)許可第2事例は、その形が分かりやすく表れています。
違反態様は不法入国、端緒は出頭申告です。在日期間は約15年2月、違反期間も同じで、来日から判定まで在留資格のない状態が続いていました。婚姻期間は約2年1月です。配偶者は在留資格「定住者」で、夫婦間の未成年の子も「定住者」を有しています。刑事処分はなく、被退去強制歴は記載からは判明しません。許可内容は「定住者(1年)」でした。本件は令和5年改正入管法及び現行ガイドライン(令和6年3月改定)の適用前の判断です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の2(2)(積極・中核):別表第二の在留資格者との家族関係。定住者は別表第二に掲げられた在留資格ですから、本件はこの積極要素に直接当たります。子も同じ「定住者」です。
- 子の利益(積極):本邦で家族とともに生活するという子の利益の保護の必要性。令和6年3月改定で明示されました。
- 第2の9(積極):不法滞在の事実を申告するため自ら出頭したこと。
- 第2の5(消極):約15年2月の不法在留。改定前は積極にも消極にもなり得るものとされていました。
- 第2の6(消極):不法入国という態様。
素行不良(第2の3)に当たる記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
同年のB類型不許可第3事例と対比すると分かりやすくなります。そちらも不法入国で、在日約26年8月・違反約26年8月と本件より長く、婚姻期間は約1月、端緒は警察逮捕で、入管法違反により懲役3年・執行猶予4年の判決を受け、実態にも疑義がもたれて不許可でした(懲役は原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。
本件が許可されたのは、家族の全員が別表第二の在留資格を有し、婚姻期間も約2年1月に及び、自ら出頭していたためだと読めます。許可された在留資格が配偶者と同じ「定住者」であることも、家族の一体性を前提に判断されたことを示していると考えられます。
弁護士のコメント
第1に、長期の不法入国事案での見通しです。約15年2月という期間は、令和6年3月改定で不法在留期間の長期化が明示的な消極要素と位置づけられたことを踏まえると、現在では本件当時より重く見られる可能性があります。他方、その期間に築いた家族関係、就労と納税の状況、地域社会との関わりは、なお積極方向で考慮される余地があります。
第2に、出頭の順序です。家族の一部だけが在留資格を欠く事案では、誰がいつ出頭し、家族の資料を誰が用意するかを事前に決めておく必要があります。出頭後は違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)、法務大臣への異議申出と進み、認定や判定に不服を留保せずに従うと、後の段階で争点が事実上封じられます。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
この類型で公表されている許可例の数は限られます。もっとも事例集は各年20件前後を抜粋して掲載するにとどまり、その年の判断を網羅していません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。
観光目的で来日された方が日本人女性との間にお子さんを授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知を当局との交渉により成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐して、依頼者ご本人のために動く立場から通訳いたします。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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