平成29年・出頭申告・刑事処分なし・婚姻約2年1月でも不許可|婚姻と同居の実態に疑義がもたれた事例(A類型不許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
出頭申告をして、刑事処分もなく、日本人配偶者との婚姻期間も2年を超えている。それでも不許可となった事例です。平成29年分の事例集(平成30年3月公表)のA類型(配偶者が日本人の場合)不許可第1事例です。
違反態様は不法残留、端緒は出頭申告です。在日期間は約3年2月、うち違反期間は約3年1月で、来日後ほどなく在留資格を失っています。日本人配偶者との婚姻期間は約2年1月で、夫婦間に子はありません。刑事処分はなく、被退去強制歴は記載からは判明しません。事例集が挙げる不許可の事情は「婚姻・同居の実態に疑義がもたれたもの」の1点です。
本件は令和5年改正入管法及び現行ガイドライン(令和6年3月改定)の適用前の判断です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の9(積極):不法滞在の事実を申告するため自ら出頭したこと。この積極要素は本件にも備わっています。
- 第2の2(1)(ウ)(当たらないと判断された):この要素は、偽装婚を除外した上で、相当期間の共同生活と相互の扶助を求めています。婚姻の届出があっても、共同生活の実体が認められなければ入口で外れます。本件はここが認められませんでした。夫婦間に子もいません。
- 第2の5(消極):約3年1月の不法在留。
- 第2の6(消極):退去強制理由となった事実。もっとも不法残留のみで、素行不良(第2の3)に当たる記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
平成29年のA類型不許可5件のうち4件に、婚姻・同居の実態への疑義が記載されています。本件はその中で、疑義以外の消極事情が記載されていない唯一の事例です。他に重い事情がなくても、実態が認められなければ不許可になり得るということです。
対照的なのが同年の許可第1事例です。そちらは婚姻約1年3月と本件より短く、違反期間は約3年でほぼ同じですが、夫婦間に未成年の子が1人おり、許可されています。ガイドライン第3が求める「積極要素が消極要素を明らかに上回る」状態は、婚姻の届出だけでは作れず、共同生活の実体によって作られると読めます。
弁護士のコメント
第1に、同居の実態は何によって示すかです。住民票の同一世帯という記載は出発点にすぎません。賃貸借契約や光熱費の名義、家計が一体であることを示す資料、生活の連続性を示す写真や通信の記録、親族や職場の関係者の陳述などを、時期の切れ目がないように積み上げる作業が要になります。何が必要かは事案ごとに異なります。
第2に、聴取での食い違いです。違反審査では夫婦が別々に事情を聴かれ、出会いの経緯、生活の細部、家計の分担などが照合されます。ここでの齟齬は実態への疑義を生みます。加えて、婚姻が偽装であると評価される場合には、電磁的公正証書原本不実記録・同供用の罪の成否が問題となり得ます。だからこそ、違反調査の段階から事実を正確に整理して臨む必要があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集に掲載がないことは、許可されていないことを意味しません。掲載は各年20件前後の抜粋にとどまります。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。傾向は出発点であり、結論ではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。
観光目的で来日された方が日本人女性との間にお子さんを授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、一旦不受理とされた婚姻と認知を憲法的観点から当局と交渉して成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
婚姻の実態が問われる事案では、資料を後から作るのではなく、日々の生活の記録を残しておくことが結果を左右いたします。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------