平成29年・当局摘発で発覚した不法残留約1年4月でも在留特別許可|日本人配偶者との婚姻約11月・未成年の子1人の事例(A類型許可第5事例)
2026/08/06
事例の概要
自ら出頭したのではなく、当局の摘発で発覚した。それでも許可された事例です。出入国在留管理庁(当時の法務省入国管理局)公表の平成29年分事例集のA類型(配偶者が日本人の場合)許可第5事例です。
違反態様は不法残留で、発覚の端緒は当局摘発です。この年のA類型の許可5件のうち、出頭申告以外の端緒はこの1件だけです。在日期間は約2年3月、うち違反期間は約1年4月、日本人配偶者との婚姻期間は約11月で、夫婦間に未成年の子が1人います。刑事処分はなく、被退去強制歴は記載からは判明しません。許可内容は「日本人の配偶者等(1年)」です。
本件は令和5年改正入管法の施行前、現行ガイドライン(令和6年3月改定)の改定前の判断です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の2(1)(ウ)(積極):日本人との法的な婚姻、共同生活と相互の扶助、夫婦間の子。婚姻約11月は短いものの、未成年の子の存在が婚姻の安定性を裏づけます。
- 子の利益(積極):本邦で家族とともに生活するという子の利益の保護の必要性。令和6年3月改定で明示された要素です。
- 第2の9(働かない):出頭申告による積極要素は、当局摘発である本件では立ちません。
- 第2の5(消極):約1年4月の不法在留。もっとも期間としては短い部類です。
- 第2の6(消極):退去強制理由の反社会性。もっとも刑事処分はなく、素行不良(第2の3)に当たる記載もありません。
結論を分けた一線はどこか
端緒は結論を決めるものではない、というのが本件から読み取れることです。同じ平成29年A類型の不許可第1事例は、端緒が有利な出頭申告で、婚姻期間も約2年1月と本件より長かったのですが、婚姻・同居の実態に疑義がもたれ不許可でした。
摘発という不利な入り方をした本件が許可されたのは、婚姻期間の短さや端緒の不利を、子を含む共同生活の実体が上回ったためと考えられます。ガイドライン第3の「積極要素が消極要素を明らかに上回る」という判断手法に照らせば、天秤に乗ったのは端緒の形式ではなく家族生活の中身だったと読めます。
弁護士のコメント
第1に、摘発で発覚した場合の初動です。身柄を拘束されると、本人が自分で資料を集めることができません。住民票、同居を示す資料、家計の一体性を示す資料、子の養育に関する資料は、配偶者やご家族が代わって整えることになります。この段取りを誰が担うかを早い段階で決めておくかどうかが、その後の立証の厚みを左右します。
第2に、聴取の場での通訳です。違反調査や違反審査での供述は、後の口頭審理や異議申出における主張の前提になります。言葉の行き違いから婚姻の経緯や同居の状況に食い違いが生じると、それだけで実態への疑義を招くことがあります。捜査機関や当局が用意する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を確保しておく意味は小さくありません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
検索しても自分と同じ事情の許可例が出てこない、というご相談は少なくありません。もっとも事例集は各年20件前後の抜粋であり、その年の許可事案を網羅していません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。
不法就労助長罪に問われて強制退去の危機に直面した女性の事案では、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を問う訴訟を進めております。この事件では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得しております。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された事案では、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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