平成29年・不法入国約5年8月・婚姻約2年で在留特別許可|未成年の子1人と日本人配偶者・出頭申告の事例(A類型許可第3事例)
2026/08/06
事例の概要
在留資格を得たことが一度もない不法入国の事案でも、家族関係が固まっていれば許可の余地があります。出入国在留管理庁(当時の法務省入国管理局)公表の平成29年分事例集のA類型(配偶者が日本人の場合)許可第3事例です。
違反態様は不法入国です。在日期間は約5年8月、違反期間も同じで、来日から判定まで一貫して不法な在留でした。端緒は出頭申告です。日本人配偶者との婚姻期間は約2年、夫婦間に未成年の子が1人います。刑事処分はなく、被退去強制歴は記載からは判明しません。許可は「日本人の配偶者等(1年)」です。
本件は令和5年改正入管法の施行前、現行ガイドライン(令和6年3月改定)の改定前の判断です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の2(1)(ウ)(積極):日本人との法的な婚姻、相当期間の共同生活と相互の扶助、夫婦間の子。婚姻約2年で未成年の子が1人という形は、この要素の中核に近いものです。
- 第2の2(1)(イ)(積極の可能性):未成年で未婚の日本人の実子を相当期間同居して監護養育していること。子が日本国籍を有する場合は(ウ)に加えて重ねて働き得ますが、子の国籍は事例集に記載がありません。
- 子の利益(積極):本邦で家族とともに生活するという子の利益の保護の必要性。令和6年3月改定で明示されました。
- 第2の9(積極):自ら出頭して申告したこと。
- 第2の5・第2の6(消極):約5年8月の不法在留と、不法入国という態様。
結論を分けた一線はどこか
平成29年のA類型は許可5件・不許可5件で、不許可5件のうち4件に婚姻・同居の実態への疑義が記載されています。この年のA類型を分けた一線は、ほぼそこにあると読めます。
対比すべきは不許可第1事例です。そちらは不法残留、出頭申告、在日約3年2月、違反約3年1月、婚姻約2年1月で、違反態様は本件より軽く婚姻期間はわずかに長いのに不許可でした。記載された不許可事情は婚姻・同居の実態への疑義のみです。不法入国という重い態様の本件が許可されたのは、子を含む共同生活の実体が確認できたためと考えられます。
弁護士のコメント
第1に、子の事情の立証です。夫婦間の子が日本国籍を有し本邦の学校に通っているという事情は、平成29年以降の事例集で積極方向に強く働いてきた要素です。ガイドライン第2の2(1)(イ)(ウ)に関わるだけでなく、本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けた子とその監護養育者を積極要素とする第2の2(3)、令和6年改定で明示された子の利益の保護の必要性にも接続します。就学の実態は在籍証明等で具体的に示せます。本件の子の年齢や就学状況は記載からは判明しません。
第2に、不法入国事案に特有の注意点です。旅券や身分事項に虚偽が絡むと、家族関係の積極要素が虚偽申告の消極要素で削られます。違反調査の段階から経緯を隠さずに述べる方針が、後の主張の土台になります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集の傾向は出発点であって結論ではありません。掲載は各年20件前後で、実際の許可件数のごく一部です。同じ事情の許可例が見つからないという理由で諦める必要はありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。
不法就労助長罪に問われて強制退去の危機に直面した女性の事案では、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を問う訴訟を進めております。この事件では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得しており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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