平成30年・自ら経営するマッサージ店で売春を周旋、風営法・売春防止法違反で罰金50万円|不法就労助長も重なり不許可となった事例(D類型不許可第8事例)
2026/08/06
事例の概要
特に考慮する消極要素が2つ重なった事案です。平成30年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)不許可第8事例で、結論は不許可です。違反態様は不法就労助長、端緒は当局の摘発で、在日約14年9月です。違反期間の欄は原典で斜線です。刑事処分は、風営法違反および売春防止法違反により罰金50万円の略式命令です。在留希望の理由は本邦に生活基盤があることです。不許可の事情として挙げられるのは、自己の経営するマッサージ店で在留資格「短期滞在」の外国人を稼働させたこと、および売春の周旋をしたことです。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 消極要素・第2の3(エ):自ら売春を行い又は他人に売春を行わせる等、社会秩序を著しく乱し人権を著しく侵害する行為が挙げられます。自己の経営する店で売春の周旋をした行為は、この中核に当たります。
- 消極要素・第2の3(イ):他の外国人の不法就労に関わる行為。「短期滞在」で在留する外国人を稼働させた点がこれに当たり、不法就労助長行為については入管法24条3号の4に定めがあります(第2の6)。
- 積極要素・その他:在日約14年9月の生活基盤のみです。
- 第2の9の出頭申告には当たらず(端緒は摘発)、家族関係(第2の2)や人道上の配慮(第2の7)の記載もありません。
結論を分けた一線はどこか
特に考慮する消極要素が2つ重なっており、天秤の傾きは明瞭です。決定的だったのは、他人に売春を行わせる行為に及んだ点と読めます。同年D類型の許可第1事例は、人身取引被害者として公的機関に保護され、国際機関の支援を受けて早期の帰国を希望した方で、特定活動(1月)が認められました。外形が似ていても、被害を受けた立場と場を設けて周旋した立場は、ガイドラインの上で正反対に評価されます。
弁護士のコメント
刑事処分がある事例です。2点を述べます。
第1に、罰金と退去強制事由の関係です。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としますので、罰金はこれに当たりません。それでも退去強制手続が進むのは、不法就労助長行為が24条3号の4により独立の退去強制事由とされるためです。罰金で済んだから在留に影響しないという理解は、24条各号の構造を踏まえていない可能性があります。起訴前に不起訴処分を得ていれば、素行に関する消極要素の一部を生じさせずに済んだ余地があります。
第2に、不法就労助長における認識です。稼働させた外国人の在留資格をどこまで確認していたかは刑事事件では争点となり、退去強制事由の判断に故意・過失を要件としない運用の当否は現に係争中の論点でございます。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例では不法就労助長の類型に不許可が並びます。もっとも事例集は各年20件前後の抜粋です。現に当事務所が担当した不法就労助長の事案では、この類型でありながら在留特別許可を獲得し、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。結果を保証するものではございませんが、公表事例の傾向は出発点であって結論ではございません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
不法就労助長罪に問われ退去強制の危機に至った女性の事案では、退去強制事由に故意・過失は不要とする従来の実務を問い直し、責任主義の射程を争う訴訟を現に続けております。この事案では在留特別許可を獲得したうえ、なお違反認定処分そのものの取消しを争っております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
略式命令に応じるかどうかの判断も、入管手続への影響を見据えて行う必要がございます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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