平成30年・自ら経営する会社で不法残留者を解体作業員として稼働させ不許可|刑事処分がなくても不法就労助長が重く評価された事例(D類型不許可第6事例)
2026/08/06
事例の概要
刑事処分がなくても退去強制手続が進む構造を示す事例です。平成30年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)不許可第6事例で、結論は不許可です。違反態様は不法就労助長、端緒は当局の摘発で、在日約14年8月です。違反期間の欄は原典で斜線が引かれており、期間の概念で捉えにくい違反態様であることを示します。刑事処分と被退去強制歴の記載はありません。在留希望の理由は、本邦に生活基盤があることです。事例集が不許可の事情として挙げるのは、自己の経営する会社において不法残留者を解体作業員として稼働させたことです。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 消極要素・第2の3(イ):他の外国人の不法就労や在留資格の偽装に関わる行為が、特に考慮する消極要素とされます。自己の経営する会社で不法残留者を稼働させた行為は、この中核に当たります。
- 消極要素・第2の6:不法就労助長行為は入管法24条3号の4に定めがあります。本事例には刑事処分の記載がありませんが、退去強制事由の該当性は刑事処分の有無とは別に判断されます。
- 積極要素・その他:在日約14年8月の生活基盤。もっとも、在留を求める理由はこれにとどまります。
- 第2の9の出頭申告には当たりません(端緒は摘発)。
- 家族関係(第2の2)や人道上の配慮(第2の7)に当たる記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
決定的だったのは、雇用する側の立場で他の外国人の不法就労を生じさせた点であると読めます。第2の3(イ)は特に考慮する消極要素ですから、生活基盤の長さだけでこれを上回るのは容易ではありません。同年D類型の許可第6事例は、在日約27年9月と本事例より長い年月を本邦で過ごし、高齢で本国に身寄りがないという人道上の事情があり、自ら出頭しました。年月の長さではなく、その年月に何が含まれているかが分かれ目です。
弁護士のコメント
刑事処分の記載がない事例です。2点を述べます。
第1に、故意・過失の位置づけです。刑事処分がないのに退去強制手続が進むのは、退去強制事由の判断に故意・過失を要件としない運用が長年踏襲されてきたためです。就労者の在留資格をどこまで確認していたかという事情は、刑事事件であれば正面から争点になります。この当否は責任主義の射程をめぐる問題であり、当事務所はこの論点を問う訴訟を現に続けております。経営者にとって、在留カードの確認記録や雇用時の手続を残すことが後の主張の基礎です。
第2に、摘発という端緒です。摘発で発覚した場合、第2の9の積極要素は得られません。違反調査の段階から、確認の経過と是正の措置を記録として提出することが要点です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例では、不法就労助長の類型に不許可が並びます。もっとも事例集は各年20件前後の抜粋にとどまります。現に当事務所が担当した不法就労助長の事案では、この類型でありながら在留特別許可を獲得し、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。結果を保証するものではございませんが、傾向は出発点であって結論ではございません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
不法就労助長罪に問われ退去強制の危機に至った女性の事案では、退去強制事由に故意・過失は不要とする従来の実務を問い直し、責任主義の射程を争う訴訟を現に続けております。この事案では在留特別許可を獲得したうえ、なお違反認定処分そのものの取消しを争っております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
雇用する立場にある方の場合、確認の経過を記録として残しておくことがすべての出発点となります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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