平成30年・覚せい剤取締法違反で懲役1年6月・執行猶予3年でも不許可|執行猶予でも退去強制事由となる24条4号チの構造(D類型不許可第4事例)
2026/08/06
事例の概要
執行猶予が付いても在留の維持につながらない類型です。平成30年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)不許可第4事例で、結論は不許可です。違反態様は刑罰法令違反、端緒は警察による逮捕で、在日約9年10月です。違反期間の欄は原典で斜線です。刑事処分は、覚せい剤取締法違反により懲役1年6月、執行猶予3年の判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。事例集が不許可の事情として挙げるのも、覚せい剤取締法違反による有罪判決です。在留希望の理由は、本邦に生活基盤があることです。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 消極要素・第2の6:薬物関係法令の違反です。入管法24条4号チは薬物関係法令の違反により有罪の判決を受けた者を退去強制事由とし、執行猶予が付された場合を除外しません。本事例は執行猶予付きですが、この号の構造からは退去強制事由に当たると読めます。
- 同じ24条のうち4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、全部執行猶予の場合を除きます。号ごとに構造が異なりますので、当該事件でどの号が問題となるかを特定して論じる必要があります。
- 積極要素・その他:在日約9年10月の生活基盤。在留を求める理由はこれのみです。
- 第2の9の出頭申告には当たりません(端緒は警察による逮捕)。
- 家族関係(第2の2)や人道上の配慮(第2の7)に当たる記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
決定的だったのは、退去強制の理由となった事実が薬物関係法令違反であること自体と読めます。執行猶予が付いたから日本に居られるという理解は、24条各号の構造を踏まえていない可能性があります。同年D類型の許可第4事例は、警察による逮捕という同じ端緒でありながら定住者(1年)が認められました。違反が在留期間更新許可申請の失念にとどまり、刑事処分がなかった点で本事例と対照的です。
弁護士のコメント
刑事処分がある事例です。2点を述べます。
第1に、目標設定の置き方です。薬物事件では4号チが執行猶予でも該当しますので、執行猶予の獲得を目標にしても在留の維持には結びつきません。起訴前の段階で不起訴処分を獲得できていれば、有罪判決を前提とするこの号の該当性そのものを生じさせずに済んだ可能性があります。断定はできませんが、目標をどこに置くかが結果を左右する類型でございます。
第2に、薬物の認識です。所持や使用の認識をめぐる争いは刑事事件の核心であり、これを刑事段階で徹底して争うことが、その後の入管手続での主張の基礎にもなります。退去強制事由の判断に故意・過失を要件としない運用の当否は、現に係争中の論点でございます。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集に載るのは各年20件前後にとどまります。薬物事件で許可例が見当たらないとしても、それは許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)の事案では、証拠を徹底して分析し、被告人質問と反対尋問を通じて無罪判決を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
薬物事件では、執行猶予を目標にするのではなく不起訴を目標に据えることが分岐点でございます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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