平成30年・他人名義の旅券で不法入国し偽装日系人として在留、職員探知で不許可|同国人配偶者との婚姻約4月では足りなかった事例(D類型不許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
身分そのものを偽って在留の外形を作り出していた事案です。平成30年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)不許可第1事例で、結論は不許可です。違反態様は不法入国、端緒は職員による探知で、在日約17年3月、違反期間は今次入国以降の約13年3月です。在留希望の理由は同国人配偶者との同居で、婚姻期間は約4月です。事例集が不許可の事情として挙げるのは、他人名義の旅券で不法入国し、偽装日系人として在留していたことです。刑事処分と被退去強制歴の記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 消極要素・第2の3(ウ):公的書類の偽変造・不正受交付・行使・所持が挙げられています。他人名義の旅券による入国と、日系人であるとの虚偽の身分での在留は、公的な身分事項を偽って在留の外形を整えた行為であり、この要素と同じ方向で評価されると読めます。
- 消極要素・第2の6と第2の5:不法入国と、今次入国以降で約13年3月の不法在留。虚偽の身分で長期にわたり在留を続けた経緯そのものが反社会性の評価に関わり、どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。
- 積極要素・第2の2(2):配偶者の在留資格の記載がなく、別表第二の在留資格者との家族関係に当たるかは判明しません。婚姻期間も約4月にとどまります。
- 第2の9の出頭申告には当たりません(端緒は職員による探知)。
結論を分けた一線はどこか
第3の判断手法では、積極要素が消極要素を明らかに上回ることを要します。天秤に載せられる積極要素はほとんど見当たりません。決定的だったのは、身分そのものを偽って在留の外形を作り出していた点であると読めます。同年D類型の許可第8事例は、外国国籍の取得によって日本国籍を失った方で、不法入国という違反態様は共通ですが、身分関係は真正で、自ら出頭し、日本人の配偶者等(3年)が認められています。身分の真正さと発覚の端緒が対照的です。
弁護士のコメント
刑事処分の記載がない事例です。2点を述べます。
第1に、偽造や不正な文書に関わる事案での認識の問題です。旅券や身分事項の真偽を本人がどこまで認識していたかは、刑事事件では正面からの争点です。他方、入管実務では退去強制事由の判断に故意・過失を要件としない運用が長く踏襲されてきました。この当否は責任主義の射程をめぐる論点として現に係争中であり、当事務所も取り組んでおります。刑事段階から認識を争うことが、後の入管手続での主張の基礎となります。
第2に、婚姻期間が短い場合の立証です。婚姻の成立時期が発覚の前後どちらかは注意深く見られます。配偶者の在留資格が別表第一か別表第二かによって、主張の組み立ても変わります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋にとどまります。不許可事例に近い事情が並んでいても、それだけで結論が決まるものではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者については、証拠の徹底した分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しております。裁判員裁判の対象事件や報道された重大事件にも数多く対応しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
身分に関わる事案では、認識の有無を刑事段階からどう記録に残すかが後の手続を左右いたします。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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