平成30年・在留期間更新申請の失念で不法残留、警察逮捕でも定住者(1年)|在日約18年6月の生活基盤が評価された事例(D類型許可第4事例)
2026/08/06
事例の概要
発覚が警察による逮捕であっても許可されることを示す事例です。平成30年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)許可第4事例で、結論は許可です。違反態様は不法残留、端緒は警察による逮捕で、在日約18年6月・違反約1年11月です。刑事処分はなく、被退去強制歴の記載もありません。在留希望の理由は、本邦に生活基盤があることです。特記事項には、在留期間更新許可申請を失念したことが記されています。許可内容は定住者(1年)です。家族関係についての記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 第2の9の出頭申告には当たりません(端緒は警察による逮捕)。もっとも、不法残留に至った経緯が在留期間更新許可申請の失念であり、当初から在留資格を得ないまま在留する意図があったとは評価されなかったと読めます。
- 積極要素・その他:約18年6月にわたる本邦での生活基盤、地域社会との関係の構築、税の納付や地域のルールの遵守といった事情が、この枠で考慮され得ます。
- 消極要素・第2の5:不法在留約1年11月。長期化が明示的な消極要素とされたのは令和6年改定ですが、その間に日本人や地域社会との関係を構築している場合には別途積極要素として考慮する留保が置かれています。
- 消極要素・第2の6:不法残留。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。
- 第2の3の素行不良に当たる事情の記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
警察による逮捕で発覚しながら許可に至っている点が重要です。決定的だったのは、違反の原因が更新申請の失念という手続上の落ち度にとどまり、18年余りの生活基盤が損なわれていなかったことであると読めます。同年D類型の不許可第5事例は、在日約6月・違反約5月と期間はむしろ短いのですが、同じく警察による逮捕で発覚し、在留を求める理由が同国人の恋人との同居にとどまりました。積み上げてきた年月の実体があるかが分かれ目です。
弁護士のコメント
刑事処分のない事例です。2点を述べます。
第1に、更新の失念という類型です。期限を過ぎてしまえば不法残留という退去強制事由が生じます。他方で、従前の在留状況、失念に至った事情、気づいた後の対応を早期に示せれば、消極要素の評価は変わり得ます。気づいた時点でどう動くかが分岐点となります。
第2に、逮捕直後の対応です。逮捕から勾留決定までの72時間が最初の勝負所です。早期の弁護人選任と、ご本人のために動く通訳の確保が要点となります。供述の訳出のニュアンスが、その後の刑事手続と入管手続の双方を左右いたします。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集が載せるのは各年20件前後で、その年の判断の全部ではありません。警察に逮捕された時点で終わりだと思われる方は多いのですが、本事例のように許可された例も現に公表されております。当事務所が担当した不法就労助長の事案も、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
在留資格を失って不法滞在となった相談者の事案では、公的書類の入手が極めて困難な状況の中で身分関係を立証し、当局の過去の許可事例を分析して同種事情の取扱いとの均衡を主張し、在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
更新の期限を過ぎてしまった場合でも、それまでに築いた生活の実体を示せるかが結論を左右いたします。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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