平成30年・母子で出頭申告し母は定住者(1年)・11歳の子は日本人の配偶者等(1年)|母に被退去強制歴1回でも在留特別許可(C類型許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
在留資格を持たないまま本邦で育った子と、その母の例です。平成30年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のC類型(外国人家族の場合)許可第1事例で、結論は許可です。本人である母の違反態様は不法残留、端緒は母子での出頭申告で、在日約13年10月・違反約13年7月です。子は本邦で出生した後に在留資格を取得しておらず、11歳とされています。許可内容は母が定住者(1年)、子が日本人の配偶者等(1年)です。特記事項には母に被退去強制歴が1回ある旨が記されています。刑事処分の記載はなく、子の就学状況も判明しません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 積極要素・第2の2(3):本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受け、本国での就学が困難で、地域社会に溶け込んでいる子とその監護養育者が対象です。子は11歳で生涯を本邦で過ごしていますが、就学の記載はありません。
- 積極要素・第2の2(1):子に日本人の配偶者等が認められた点からは、日本人との身分関係が前提とされたことがうかがえます。経緯の記載はありません。
- 積極要素:家族とともに生活する子の利益の保護の必要性(令和6年3月改定で明示。参議院附帯決議14項)。
- 積極要素・第2の9:母子がそろって自ら出頭したこと。
- 消極要素・第2の5と第2の6:不法在留約13年7月、不法残留、母の被退去強制歴1回。長期化が明示的な消極要素とされたのは令和6年改定であり、どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。天秤を傾けたのは、11歳の子が本邦で積み上げた生活の実体と、母子そろっての出頭申告であると読めます。被退去強制歴1回を抱えながら許可に至っている点が目を引きます。同年C類型の不許可第2事例は、職員による探知で発覚し、本人に窃盗の有罪判決がありました。子の事情の厚みが親側の消極要素を上回るかが分かれ目であったと考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分の記載がない事例です。2点を述べます。
第1に、被退去強制歴があるときの立証です。歴そのものは動かせませんので、その後の年月に何を積み上げたかを示すほかありません。居住の継続、生計、税や地域のルールの遵守、支援する第三者の存在が中心となります。
第2に、子について用意する資料です。出生に関する書類、在留資格を得ないまま生活してきた経緯、就学と地域との関わり、身分関係を示す資料です。注4は退去強制令書の発付後の事情変更を原則として考慮しませんので、違反審査までに整えるのが安全でございます。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集が載せるのは各年20件前後にとどまり、その年の判断の全部ではありません。似た事情の許可例が見当たらないとしても、それは許可の可能性がないことを示しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的な観点から交渉して婚姻と認知を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
被退去強制歴を抱えたご家族でも、子が本邦で送ってきた年月を記録として示せるかが結論を左右いたします。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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