平成30年・不正作出支払用カード電磁的記録供用と窃盗で懲役3年・執行猶予4年|執行猶予でも在留は守れなかった事例(B類型不許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
執行猶予判決でも在留は守れないという構造が出た事例です。平成30年分事例集B類型(配偶者が正規在留外国人)不許可第1事例です。
違反態様は不法残留及び刑罰法令違反、端緒は警察逮捕です。在日期間は約10年3月、違反期間は約10月です。婚姻期間は約3年10月、夫婦間に子はありません。刑事処分は、不正作出支払用カード電磁的記録供用及び窃盗により懲役3年、執行猶予4年の判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。配偶者の在留資格の記載はなく、不許可の事情欄も原典では空欄です。本件は令和5年改正入管法及び現行ガイドライン(令和6年3月改定)の適用前の判断です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の6(消極・中核):退去強制理由の反社会性。カードの不正な電磁的記録を使う行為と窃盗はいずれも財産犯で、懲役3年の量刑に評価が表れています。
- 第2の9(働かない):端緒は警察逮捕。
- 第2の2(2)(確認できない):この要素が特に考慮するのは別表第二の資格者との家族関係です。本件は配偶者の在留資格の記載がなく、別表第二か別表第一かを確かめられません。婚姻約3年10月はありますが、子はなし。
- 第2の5(消極として軽い):違反期間は約10月。
不許可の事情欄は空欄ですので、記載のない事情を推測で補えません。
結論を分けた一線はどこか
同年のB類型許可第4事例は、違反期間が約8年4月と本件の10倍長く、婚姻も約1年6月と短いのに、配偶者が「永住者」、端緒は出頭申告、刑事処分もなく許可されています。
本件で天秤が傾かなかった理由は、不法在留の長さではありません。財産犯の重い量刑と警察逮捕という端緒、家族関係の側が別表第二の資格に裏づけられているか確認できないことの組合せだと読めます。
弁護士のコメント
第1に、執行猶予と退去強制事由の関係です。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としますが、全部執行猶予は除外されます。懲役3年に執行猶予4年が付く本件は、この号に当たりません。それでも手続に乗ったのは、不法残留自体が別の退去強制事由となるからです。「執行猶予が付いたから日本に居られる」という説明は、この構造を捉えていない可能性があります。刑事段階で不起訴処分を得られていれば、刑罰法令違反による消極要素を生じさせずに済んだ余地はありました。
第2に、配偶者の在留資格の確認です。B類型では、配偶者が別表第二の資格を有するかが出発点です。技術・人文知識・国際業務、留学、家族滞在等の別表第一の場合、第2の2(2)には直接当たりません。配偶者の在留カードと資格の履歴は、違反審査の段階で示すべき資料です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
財産犯の有罪判決がある事案で、公表事例から許可例を探すのは容易ではありません。もっとも事例集は年20件前後の抜粋で、掲載がないことは許可がなかったことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議により、全件不起訴処分を獲得しております。
観光目的で来日された方が日本人女性との間にお子さんを授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、一旦は不受理とされた婚姻と認知を憲法的な観点から当局と交渉して成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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