平成30年・覚せい剤取締法違反で懲役1年2月、被退去強制歴2回で不許可|在日約25年2月・日本人配偶者と婚姻約5年10月でも許可されなかった事例(A類型不許可第4事例)
2026/08/06
事例の概要
在日期間が25年を超えても、薬物事犯が重なると結論は動きにくくなります。平成30年分事例集A類型(配偶者が日本人)不許可第4事例です。
違反態様は不法残留及び刑罰法令違反、端緒は警察逮捕です。在日期間は約25年2月、違反期間は約6月にとどまります。婚姻期間は約5年10月で、夫婦間に子はありません。刑事処分は、覚せい剤取締法違反により懲役1年2月の判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。同法違反による懲役1年6月、執行猶予3年の前科があり、被退去強制歴も2回あります。本件は令和5年改正入管法及び現行ガイドライン(令和6年3月改定)の適用前の判断です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の6(消極・中核):退去強制理由となった事実の反社会性。薬物事犯は不許可側に集中する類型です。
- 反復性(消極):同種の前科があり、被退去強制歴も2回あります。違反と送還を繰り返した経緯が独立して重く働きます。
- 第2の9(働かない):端緒は警察逮捕です。
- 第2の5(消極として軽い):違反期間は約6月です。長期化を消極要素とする趣旨からは、この点は本件の重みではありません。
- 第2の2(1)(ウ)(積極):婚姻約5年10月。子はなく、在日約25年2月の生活基盤は第2の5の留保として積極方向にも読めます。
結論を分けた一線はどこか
同年のA類型許可第1事例は、在日・違反ともに約10年8月、婚姻は約3年で子もありませんが、出頭申告で刑事処分がなく許可されています。本件は在日期間がはるかに長く、違反期間は約6月と短いのに不許可です。
天秤を傾けなかったのは、生活の長さでも婚姻の長さでもありません。薬物事犯の再度の有罪と被退去強制歴2回という反復性が積み上がり、第3のいう「積極要素が消極要素を明らかに上回る」状態に至らなかったと読めます。
弁護士のコメント
第1に、薬物事犯に固有の構造です。入管法24条4号チは薬物関係法令違反による有罪を退去強制事由とし、執行猶予が付いても該当します。無期又は1年を超える拘禁刑を対象とし全部執行猶予を除く4号リとは、ここが決定的に違います。猶予付きの前科でも4号チの該当性は生じ得ますので、「猶予が付いたから在留できる」という理解は危険です。刑事段階で不起訴処分を得られていれば、この事由の該当性を生じさせずに済んだ可能性があります。
第2に、薬物の認識です。所持や使用の認識、共謀の有無は刑事段階で徹底して争うべき事項です。入管実務は退去強制事由の判断に故意・過失を要しない運用を続けてきましたが、松村大介弁護士はこの当否を問う訴訟を係争中です。刑事段階での争い方が、後の入管手続の主張の基礎になります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
薬物事犯と被退去強制歴が重なる事案で、公表事例から許可例を見つけるのは容易ではありません。もっとも事例集は年20件前後の抜粋で、掲載がないことは許可がなかったことを意味しません。当事務所は、公表事例では不許可が並ぶ不法就労助長の類型でも在留特別許可を得ております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された事案では、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しております。裁判員裁判対象事件や広く報道された事件も多数担当しております。
不法就労助長罪に問われた女性の事案では、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を問う訴訟を進めており、この事件でも在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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