平成30年・日本人配偶者との婚姻約1年8月で在留特別許可|数字が近い不許可事例と結論が分かれた不法残留約2年3月の事例(A類型許可第4事例)
2026/08/06
事例の概要
同じ年の不許可事例と数字がよく似ているのに、結論が分かれた事例です。平成30年分事例集のA類型(配偶者が日本人)許可第4事例を見ます。
違反態様は不法残留、端緒は出頭申告です。在日期間は約3年3月、違反期間は約2年3月で、婚姻期間は約1年8月です。夫婦間に子はありません。刑事処分はなく、被退去強制歴は記載からは判明しません。許可内容は「日本人の配偶者等(1年)」です。婚姻期間約1年8月は違反期間約2年3月の大部分と重なっており、在留資格を失った後に生活を共にしてきた経過が読み取れます。本件は令和5年改正入管法及び現行ガイドライン(令和6年3月改定)の適用前の判断です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の2(1)(ウ)(積極・中核):日本人との法的な婚姻、相当期間の共同生活と相互扶助、婚姻の安定性と成熟性。約1年8月の婚姻がこれを基礎づけたと読めます。
- 第2の9(積極):不法滞在を申告するため自ら出頭したこと。
- 第2の5(消極):約2年3月の不法在留。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年3月改定です。
- 第2の6(消極):不法残留という該当事実。
刑罰法令違反はなく、第2の3の素行不良や仮放免中の条件違反に当たる記載もありません。
結論を分けた一線はどこか
同年のA類型不許可第1事例と並べてみます。そちらは在日約4年9月・違反約1年8月・婚姻約1年5月で、端緒も同じ出頭申告、子もなく刑事処分もありません。違反期間は本件より短く、在日期間は本件より長いのですから、数字の上では不利とは言えません。それでも不許可となった理由として記載されているのは、婚姻・同居の実態に疑義がもたれたことです。
つまり、この2件を分けたのは期間の組合せではなく、夫婦が実際に生活を共にしていると認められたかどうかだと読めます。
弁護士のコメント
第1に、実態への疑義は事後に晴らしにくいという点です。違反審査や口頭審理で疑義を持たれたまま手続が進むと、その評価は判定や異議申出の判断にそのまま引き継がれます。ガイドライン注4は退去強制令書発付後の事情変更を原則として考慮しないとしていますので、疑義が生じる前に、住民票、賃貸借契約書、家計の一体性、親族や職場との関わりを示す資料を出しておくことが要になります。
第2に、供述の一貫性です。夫婦それぞれが別に事情を聴かれる場面では、出会いの経緯、同居の開始時期、生活費の分担といった点の食い違いが疑義の出発点になりがちです。通訳を介した聴取では、微妙な言い回しが調書に反映されにくいこともあります。依頼者ご本人のために動く立場の通訳を確保しておくことの意味は、ここにもあります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
この2件の対比から分かるとおり、事例集の数字だけで自分の見通しを決めることはできません。加えて事例集は年20件前後の抜粋であり、掲載がないことは許可されていないことを意味しません。当事務所は、公表事例では不許可が並ぶ不法就労助長の類型でも在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
不法就労助長罪に問われた女性の事案では、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を問う訴訟を進めており、この事件でも在留特別許可を獲得しております。
執行猶予判決を得ても多くの罪名では結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。接見の初動から公判の結審まで松村弁護士自身が全工程を直接担当し、依頼者ご本人のために動く立場の中国語専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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