平成30年・婚姻約10月でも在留特別許可|日本人配偶者との間に未成年の子1人・不法残留約3年5月・出頭申告の事例(A類型許可第3事例)
2026/08/06
事例の概要
婚姻から1年も経たない段階で許可された事例です。平成30年分事例集のA類型(配偶者が日本人)許可第3事例です。
違反態様は不法残留、端緒は出頭申告です。在日期間は約4年5月、うち違反期間は約3年5月です。婚姻期間は約10月と短いものの、夫婦間に未成年の子が1人います。刑事処分はなく、被退去強制歴は判明しません。許可内容は「日本人の配偶者等(1年)」です。子の年齢・国籍・就学状況も記載からは判明しません。本件は令和5年改正入管法及び現行ガイドライン(令和6年3月改定)の適用前の判断です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の2(1)(ウ)(積極・中核):日本人と法的に婚姻し、相当期間共同生活をして相互に扶助し、夫婦間に子があるなど婚姻が安定かつ成熟していること。婚姻約10月という短さを、未成年の子の存在が補ったと読めます。
- 第2の2(1)(イ)(積極):未成年で未婚の日本人の実子を相当期間同居して監護養育していること。夫婦の一方が日本人ですから、夫婦間の子は国籍法2条1号により日本国籍を有するのが通常で、その場合はこの要素にも当たり得ます。
- 第2の9(積極):自ら出頭したこと。
- 子の利益(積極):家族とともに本邦で生活する子の利益。明示は令和6年3月改定です。
- 第2の5・第2の6(消極):約3年5月の不法在留と、不法残留という該当事実。
結論を分けた一線はどこか
同年のA類型不許可第1事例は、端緒も出頭申告で、在日約4年9月・違反約1年8月と違反期間はむしろ短く、婚姻も約1年5月ありましたが、子がなく、婚姻・同居の実態に疑義がもたれて不許可でした。
本件との差は、夫婦間に未成年の子がいることに尽きると読めます。子の存在は婚姻が形だけでないことを端的に示し、第2の2(1)(ウ)と(イ)の双方を同時に基礎づけ得ます。
弁護士のコメント
第1に、子の就学がもつ意味です。日本国籍の子が本邦の小中学校に通っている場合、その事実は二つの働きをします。一つは、(イ)の「相当期間同居して監護養育している」ことを在学証明書等で客観的に裏づけられる点です。もう一つは、第2の2(3)が本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けた者とその監護養育者を独立の積極要素としており、学校生活として生活基盤が定着している事実が、令和6年改定の子の利益の評価に直結する点です。
第2に、出頭の時期です。子の学校生活を理由に先延ばしにすると、摘発や逮捕で発覚して第2の9の積極要素を失うおそれがあります。注4により令書発付後の事情変更は原則として考慮されませんので、母子健康手帳や在籍資料は違反審査の段階までに出しておきたいところです。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
年に20件前後という掲載件数からも分かるとおり、事例集はその年の判断のごく一部です。同じ組合せが載っていないことは、可能性がないことを示しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
東京都豊島区の舟渡国際法律事務所は、外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
観光目的で来日された方が日本人女性との間にお子さんを授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、一旦は不受理とされた婚姻と認知を憲法的な観点から当局と交渉して成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在等を総合的に主張し、不起訴処分を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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