令和元年・他の外国人に不正に在留許可を受けさせる目的で偽造文書を入管に提出、不法入国のまま約17年1月で不許可(D類型不許可第8事例)
2026/08/06
事例の概要
刑事処分がないにもかかわらず、素行の消極要素によって不許可となった事例です。令和元年分事例集(出入国在留管理庁公表)のD類型(その他)不許可第8事例です。違反態様は不法入国および偽造文書等行使で、端緒は入管職員の探知。在日約17年1月・違反約17年1月であり、在日期間の全部が違反期間です。刑事処分はありません。在留希望の理由は、本邦に生活基盤があることでした。事例集は、他の外国人に不正に在留許可を受けさせる目的で偽造文書を入管に提出したことを不許可の事情としています。被退去強制歴の記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前の判断です。
- 消極要素・第2の3(イ):他の外国人の在留資格の偽装に関わる行為は、特に考慮する消極要素です。他人のために偽造文書を入管に提出する行為は正面から当たります。
- 消極要素・第2の3(ウ):公的書類の偽変造や行使も同項が挙げる消極要素です。入管の審査そのものを歪める点で反社会性が高く評価されたと読めます。
- 消極要素・第2の5:不法在留約17年1月。在日期間の全部が違反期間です。
- 消極要素・第2の6:不法入国。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。第2の9の出頭申告には当たりません(職員探知)。
- 積極要素:本邦に生活基盤があることは考慮され得ますが、その期間の全部が不法な在留であり、評価は限られます。
結論を分けた一線はどこか
刑事処分がないという点は、通常であれば積極的な事情になり得ます。それでも不許可となったのは、退去強制事由該当性と在留特別許可の判断が刑事処分の有無に依存しないという構造の現れです。同じ令和元年D類型の許可第4事例は、在日約22年9月・本邦出生の日系3世の事案で、消極要素は違反期間約7月の不法残留にとどまりました。長い在日期間が積極要素として働くのは、その期間の中身が問われないときに限られると読めます。
弁護士のコメント
刑事処分がない事例ですが、退去強制の判断は独自に進みます。2点を述べます。
第1に、故意・過失です。刑事処分がない場合でも、入管は偽造文書の提出という事実を認定して消極要素とします。文書が偽造であることを知っていたか、誰の依頼でどの役割を担ったかは、刑事事件であれば故意や共謀の認識として争われる部分です。他方、入管実務では退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする運用が続いており、この論点は松村大介弁護士が現に訴訟で争っております。
第2に、違反審査の段階での争い方です。退去強制事由該当性と、素行の消極要素として認定される事実の双方について、違反調査の段階から主張と反証を残しておく必要があります。認定や判定に不服を留保せずに従うと、争点が事実上封じられます。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋で、実際の判断のごく一部です。他人の在留手続に関わったとされる事案は、関与の程度によって評価が変わり得ます。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に至った女性の事案では、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を正面から問う訴訟を係争中です。この事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得しており、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、当局から一旦受理されなかった婚姻と認知を憲法的観点からの交渉によって成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
執行猶予判決を得ても多くの罪名では結果として退去強制に至りますので、当事務所は起訴前段階での不起訴処分の獲得を最優先に据えております。接見の初動から公判の結審までの全工程を松村弁護士が直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐して、依頼者ご本人の側で動きます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更についても、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
刑事処分がない事案でも、入管手続では独自の認定が行われてまいります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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