令和元年・外国人親の養育放棄により児童福祉施設での保護を希望、定住者(1年)|職員探知での発覚でも在留特別許可(D類型許可第5事例)
2026/08/06
事例の概要
親の側の事情によって在留資格を失った方の保護に、在留特別許可が用いられた事例です。令和元年分事例集(出入国在留管理庁公表)のD類型(その他)許可第5事例で、結論は許可です。違反態様は不法残留、端緒は入管職員の探知で、在日約6年・違反約5年10月。刑事処分はありません。在留希望の理由は、児童福祉施設における保護を希望することでした。事例集は、外国人の親が養育を放棄しているものと特記しています。許可内容は定住者(1年)です。年齢や就学の状況は事例集の記載からは判明しません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前の判断です。
- 積極要素・第2の7:人道上の配慮として列挙されるのは、難病等での治療の必要性、本国情勢による帰国困難、無国籍で送還できないことです。本件は列挙自体には当たりませんが、養育の放棄という本人に帰責性のない事情と、児童福祉施設での保護の必要性が人道上の配慮として考慮されたと読めます。
- 積極要素:家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性が明示されたのは令和6年3月改定です(参議院附帯決議14項)。本件は改定前の判断ですが、児童の保護という観点は同じ方向を向いています。
- 消極要素・第2の5:不法在留約5年10月。もっとも、不法な状態が生じた原因は親の側にあり、本人の帰責性は乏しいと読めます。
- 消極要素・第2の6:不法残留。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。第2の9の出頭申告には当たりません(職員探知)。
結論を分けた一線はどこか
端緒が職員の探知であり、第2の9の積極要素を欠く事案でありながら許可されています。天秤を傾けたのは、不法な状態が本人の行為によって生じたものではなく、現に保護を必要とする状態にあったことだと読めます。同じ令和元年C類型の不許可第1事例は、子2人が本邦出生でありながら、本人自身に覚醒剤取締法違反の有罪判決と被退去強制歴がありました。本人に帰責性があるかどうかが結論を大きく分けると考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分がない事例です。抑制的に2点を述べます。
第1に、保護の枠組みとの接続です。公的機関による保護の記録は、退去強制手続における主張に客観的な裏付けを与えます。誰が現に養育しているのか、養育の放棄がいつから続いているのかが記録に残ることが重要です。
第2に、本人の帰責性を示す整理です。不法な状態が生じた経緯を、本人の行為と親の行為に分けて示す必要があります。本人が在留手続を自ら行える立場になかった期間があることは、消極要素の評価を左右いたします。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しないとしていますので、資料の提出は早い段階が望ましいところです。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集に掲載されるのは各年20件前後です。児童の保護に関する事案は事情が一件ごとに異なり、公表事例と同じ形にならないことがむしろ通常です。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
東京都豊島区の舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として対応しております。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、当局から一旦受理されなかった婚姻と認知を憲法的観点からの交渉によって成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
海外のSNSでの侮辱被害につき、日本の警察と国際刑事警察機構(インターポール)の捜査により刑事告訴が受理された事例も扱っております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
親の側の事情で在留資格を失った場合、帰責性の所在を丁寧に整理する必要がございます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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