令和元年・不法入国のまま約16年1月、日本国籍の実子の監護養育で定住者(1年)|出頭申告により在留特別許可が出た事例(D類型許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
入国の時点から在留資格がなかった方が、日本国籍の子を育てていることを理由に許可された事例です。令和元年分事例集(出入国在留管理庁公表)のD類型(その他)許可第1事例で、結論は許可です。違反態様は不法入国、端緒は出頭申告で、在日約16年1月・違反約16年1月であり、在日期間の全部が違反期間です。刑事処分はありません。在留希望の理由は、日本国籍を有する実子の監護、養育でした。事例集は、日本国籍を有する実子を監護、養育していることを特記しています。許可内容は定住者(1年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前の判断です。
- 積極要素・第2の2(1)(イ):未成年未婚の日本人の実子を相当期間同居して監護養育していることは、特に考慮する積極要素です。在日約16年1月という期間は、監護養育の相当期間を裏付ける方向に働いたと読めます。
- 積極要素:本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性(明示は令和6年3月改定・参議院附帯決議14項)。
- 積極要素・第2の9:自ら出頭したこと。
- 消極要素・第2の5:不法在留約16年1月。長期化が明示的な消極要素と位置づけられたのは令和6年改定であり、現行ガイドラインの下ではこの期間の評価がより厳しく働く可能性があります。
- 消極要素・第2の6:不法入国。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。第2の3の素行不良の記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
本件では、入国の時点から在留資格がなく違反期間が16年に及ぶという重い消極要素がありながら、日本国籍の実子の監護養育という第2の2(1)(イ)の要素と自主的な出頭が天秤を傾けたと読めます。同じ令和元年D類型の不許可第1事例も日本国籍の実子がいる事案ですが、その子は成人で、本人には不法就労助長と被退去強制歴2回がありました。子が未成年で現に監護を要する状態にあるかどうかが、実子の存在という事情の重みを大きく変えると考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分がない事例です。2点を述べます。
第1に、出頭の前にそろえる資料です。監護養育の実体は、同居の事実、日々の養育の分担、家計の一体性、学校や医療機関との関わりで示されます。住民票の記載、児童手当や保険の状況、学校からの通知、生活費の流れが分かる資料が中心となります(内容は事案によります)。
第2に、主張の時期です。退去強制手続は違反調査、違反審査、口頭審理、異議申出と段階を追って進みます。在留特別許可は最後の段階の判断ですが、そこで初めて動くのでは間に合わないことがあります。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しないとしていますので、監護養育の実体は違反審査の段階から記録に残すべきものです。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集が載せるのは各年20件前後で、その年の許可の全体ではありません。似た事情の許可例が見当たらないことは、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、当局から一旦受理されなかった婚姻と認知を憲法的観点からの交渉によって成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
特殊詐欺の出し子とされた20代の女性につき、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
日本国籍の子を育てている場合、その実体をどの段階で示すかが結論を左右いたします。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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