令和元年・在日約30年6月・婚姻約7年8月でも不許可|覚醒剤取締法違反の判決と前科2件・被退去強制歴2回の事例(A類型不許可第2事例)
2026/08/06
事例の概要
日本での生活が30年を超え、婚姻も7年を超えている。それでも不許可となった事例です。出入国在留管理庁が公表した令和元年分の事例集のA類型(配偶者が日本人の場合)不許可第2事例です。
違反態様は不法残留及び刑罰法令違反、端緒は警察逮捕です。在日期間は約30年6月、うち違反期間は約10月です。日本人配偶者との婚姻期間は約7年8月で、夫婦間に子はありません。刑事処分は、覚醒剤取締法違反により懲役1年6月の判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。不許可の事情として、覚醒剤取締法違反等の前科2件と被退去強制歴2回が挙げられています。実刑か執行猶予かは記載からは判明しません。
本件は令和5年改正入管法の施行前、かつ現行ガイドライン(令和6年3月改定)の改定前の判断です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の2(1)(ウ)(積極になりきれなかった):婚姻約7年8月は短くありません。もっとも夫婦間に子はなく、この積極要素だけで消極要素を上回るには至りません。
- 第2の6(消極):退去強制理由となった事実の反社会性。薬物法令違反は反社会性が高く評価されます。
- 素行・被退去強制歴(消極):同種の前科2件という反復と、退去強制歴2回。いずれも素行と退去強制理由の両面で重く働きます。
- 第2の9(当たらない):警察逮捕による発覚のため、自ら出頭したことによる積極要素はありません。
- 第2の5(消極):約10月の不法在留期間。期間自体は短いものです。
結論を分けた一線はどこか
違反期間は約10月にとどまります。それでも不許可になったのは、薬物法令違反の有罪判決、同種前科2件、被退去強制歴2回という三重の消極要素が積み重なったためと考えられます。
同年A類型の許可第3事例は、在日約29年4月、違反約3年2月、婚姻約1年7月と婚姻期間はむしろ短く子もありませんが、刑事処分がなく許可されています。在日期間や婚姻期間の長さは、素行面の消極要素を打ち消す方向には働かないと読めます。
弁護士のコメント
第1に、薬物事件の構造です。入管法24条4号チは薬物関係法令違反による有罪を退去強制事由とし、執行猶予が付いても該当します。無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としつつ全部執行猶予を除外する同条4号リとは、構造が根本的に異なります。この類型では「執行猶予を得れば日本に残れる」という見通しは成り立ちません。
第2に、だからこそ起訴前の段階が勝負所です。所持や使用の認識、対象物の同一性、証拠収集手続の適法性を徹底して争い不起訴処分を獲得できていれば、退去強制事由該当性そのものを生じさせずに済んだ可能性があります。断定はできませんが、その余地はあったと考えられます。
第3に、現行法では1年を超える拘禁刑の実刑であれば、入管法50条1項ただし書の「特別の事情」が要求されます。本件の量刑がどちらかは記載から判明しません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋であり、掲載外の許可事例が数多くあります。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者の事案では、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しております。裁判員裁判の対象事件や報道された重大事件にも多数対応しております。
観光目的で来日された方が在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知を当局と交渉して成立させ、過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
薬物事件では、執行猶予の獲得を最終目標に据えると入管手続で行き詰まります。逮捕直後からの方針の立て方が結果を分けます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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