舟渡国際法律事務所

令和元年・出頭申告で刑事処分もないのに不許可|婚姻約1年6月・婚姻と同居の実態がないと判断された事例(A類型不許可第1事例)

お問い合わせはこちら

令和元年・出頭申告で刑事処分もないのに不許可|婚姻約1年6月・婚姻と同居の実態がないと判断された事例(A類型不許可第1事例)

令和元年・出頭申告で刑事処分もないのに不許可|婚姻約1年6月・婚姻と同居の実態がないと判断された事例(A類型不許可第1事例)

2026/08/06

事例の概要

自ら出頭し、刑事処分も一切ない。それでも不許可になった事例です。出入国在留管理庁が公表した令和元年分の事例集のA類型(配偶者が日本人の場合)不許可第1事例を取り上げます。

違反態様は不法残留、発覚の端緒は出頭申告です。在日期間は約1年5月、うち違反期間は約1年2月です。婚姻期間は約1年6月で、在日期間よりも長い数字です。夫婦間に子はありません。刑事処分はなく、被退去強制歴も事例集の記載からは判明しません。事例集が挙げる不許可の事情は「婚姻・同居の実態がないもの」の1点だけです。

本件は令和5年改正入管法の施行前、かつ現行ガイドライン(令和6年3月改定)の改定前の判断です。

ガイドラインのどの評価要素に当たるか

  • 第2の9(積極):不法滞在の事実を申告するため自ら出頭したこと。この積極要素は本件にも備わっています。
  • 第2の2(1)(ウ)(当たらないと判断された):この要素は、偽装婚を除外した上で、相当期間の共同生活と相互の扶助を求めています。婚姻の届出があっても共同生活の実体が認められなければ入口で外れます。本件はここが認められませんでした。
  • 第2の5(消極):約1年2月の不法在留期間。もっとも、この類型の中では短い方です。
  • 第2の6(消極):退去強制理由となった事実。違反態様は不法残留のみで、素行不良(第2の3)に当たる記載はありません。

結論を分けた一線はどこか

本件には他に重い消極事情の記載がありません。それでも不許可となったところに、この事例の意味があります。

同年A類型の許可第2事例と並べてみてください。そちらも出頭申告、刑事処分なし、子なしで、婚姻期間約2年、違反期間約1年11月と本件より長いのですが、許可されています。両者の記載上の違いは、婚姻・同居の実態が認められたかどうかの一点に尽きます。ガイドライン第3が求める「積極要素が消極要素を明らかに上回る」状態は、婚姻の届出では作られず、共同生活の実体によって作られると読めます。

弁護士のコメント

第1に、刑事処分がない事案では、初動と違反審査での立証がすべてを決めます。何を述べ、どの資料を出すかを決めないまま出頭すると、後の訂正に大きな労力がかかります。

第2に、同居の実態を何で示すかです。住民票の同一世帯という記載は出発点にすぎません。賃貸借契約、光熱費の名義、家計が一体であることを示す入出金の記録、生活の連続性を示す写真や通信の履歴、近隣の方の陳述を、時期の切れ目なく積み上げる作業が中心になります。

第3に、聴取での食い違いへの備えです。違反審査では夫婦が別々に事情を聴かれ、出会いの経緯や生活の細部、家計の分担が照合され、齟齬は実態への疑義を生みます。加えて、婚姻が仮装と評価される場合には、電磁的公正証書原本不実記録・同供用の罪の成否も問題となり得ます。違反調査の段階から事実を正確に整理して臨む必要があります。

公表されていない事案でも許可はあり得ます

事例集の掲載は各年20件前後です。同じ事情の許可例が見当たらないことは、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。

観光目的で来日された方が日本人女性との間にお子さんを授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、一旦不受理とされた婚姻と認知を憲法的観点から当局と交渉して成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。

多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。

結語

婚姻の実態が問われる事案では、資料を後から作るのではなく、日々の生活の記録を残しておくことが結果を左右いたします。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。