令和元年・夫婦間に子がなくても在留特別許可|在日約2年のうち違反約1年11月・婚姻約2年・出頭申告の事例(A類型許可第2事例)
2026/08/06
事例の概要
夫婦間にお子さんがいない場合、在留特別許可は難しいのでしょうか。出入国在留管理庁が公表した令和元年分の事例集のA類型(配偶者が日本人の場合)許可第2事例は、その問いに一つの答えを与えます。
違反態様は不法残留、発覚の端緒は出頭申告です。在日期間は約2年で、うち違反期間が約1年11月を占めます。つまり来日後ほどなく在留資格を失ったことになります。日本人配偶者との婚姻期間は約2年で、夫婦間に子はありません。刑事処分はなく、被退去強制歴は事例集の記載からは判明しません。それでも「日本人の配偶者等(1年)」が許可されました。
本件は令和5年改正入管法の施行前、かつ現行ガイドライン(令和6年3月改定)の改定前の判断です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の2(1)(ウ)(積極):日本人と法的に婚姻し、相当期間共同生活をして相互に扶助していること。同要素は「夫婦間に子があるなど」を安定・成熟の例示として挙げますが、子の存在を必須の条件としているわけではありません。本件は共同生活の実質によってこの要素が満たされたと読めます。
- 第2の9(積極):不法滞在の事実を申告するため自ら出頭したこと。
- 第2の5(消極):約1年11月の不法在留期間。この長期化が明示的に消極要素と位置づけられたのは令和6年改定であり、従前は積極にも消極にもなり得るものとされていました。
素行不良(第2の3)や退去強制理由の反社会性(第2の6)を重く見るべき記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
比べていただきたいのが、同年A類型の不許可第1事例です。そちらも出頭申告で、刑事処分もなく、夫婦間に子がなく、婚姻期間約1年6月と本件と大きく変わりません。それでも不許可となった理由は、婚姻・同居の実態がないと判断されたことです。
つまり令和元年のA類型において、子のいない夫婦の結論を分けたのは期間や端緒ではなく、共同生活の実体が認められたかどうかであったと読めます。ガイドライン第3が求める「積極要素が消極要素を明らかに上回る」状態は、婚姻の届出だけでは作れないということです。
弁護士のコメント
第1に、子がいない事案では同居の実態の立証が全体の重心になります。住民票の同一世帯という記載は出発点にすぎません。賃貸借契約や光熱費の名義、家計が一体であることを示す資料、生活の連続性を示す写真や通信の記録、勤務先や近隣の方の陳述などを、時期の切れ目が生じないように積み上げる作業が要になります。
第2に、違反審査の段階での対応です。この段階では夫婦が別々に事情を聴かれ、出会いの経緯や生活の細部、家計の分担などが照合されます。そこでの食い違いは実態への疑義を生みます。認定や判定に対する不服を留保せずに従うと、後の段階で争点が事実上封じられることにもなります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集の掲載は各年20件前後の抜粋です。ここに載っていないことは、許可されていないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。公表事例の傾向は出発点であって、結論ではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。
観光目的で来日された方が日本人女性との間にお子さんを授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、一旦不受理とされた婚姻と認知を憲法的観点から当局と交渉して成立させ、過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
特殊詐欺の出し子とされた20代の女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在などを総合的に主張し、不起訴処分を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
お子さんがいない夫婦の事案では、日々の生活の記録がそのまま立証の材料になります。後から作るのではなく、残しておくことが要です。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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