令和元年・日本人配偶者との婚姻約2年6月で在留特別許可|不法残留約1年7月・未成年の子1人・出頭申告の事例(A類型許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
在留資格を失ったまま日本人の配偶者と暮らしている方に、まず見ていただきたい類型です。出入国在留管理庁が公表した令和元年分の事例集のうち、A類型(配偶者が日本人の場合)許可第1事例を取り上げます。
違反態様は不法残留で、発覚の端緒は出頭申告です。在日期間は約4年7月、うち違反期間は約1年7月。日本人配偶者との婚姻期間は約2年6月で、夫婦間に未成年の子が1人います。刑事処分はありません。結果は「日本人の配偶者等(1年)」の許可でした。被退去強制歴は、事例集の記載からは判明しません。
本件は令和5年改正入管法の施行前、かつ現行ガイドライン(令和6年3月改定)の改定前の判断です。以下では現行の評価要素に当てはめて整理いたします。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の2(1)(ウ)(積極):日本人と法的に婚姻し、相当期間共同生活をして相互に扶助し、夫婦間に子があるなど婚姻が安定かつ成熟していること。婚姻約2年6月に未成年の子1人が伴っており、この要素の中心に位置します。
- 第2の9(積極):不法滞在の事実を申告するため自ら出頭したこと。
- 子の利益(積極):本邦で家族とともに生活するという子の利益の保護の必要性。この要素が明示されたのは令和6年3月改定であり、参議院附帯決議14項を踏まえたものです。
- 第2の5(消極):約1年7月の不法在留期間。長期化が明示的に消極要素と位置づけられたのも令和6年改定で、従前は積極にも消極にもなり得るものとされていました。
素行不良(第2の3)を基礎づける記載はなく、刑事処分もありません。
結論を分けた一線はどこか
違反期間約1年7月は、この類型の中では短い方です。婚姻約2年6月と未成年の子1人という家族関係の実質が、その消極要素を明らかに上回ったと読めます。
対照的なのが同年A類型の不許可第2事例です。そちらは婚姻期間約7年8月、在日期間約30年6月と本件よりはるかに長いのですが、覚醒剤取締法違反による有罪判決に加え、同種の前科2件と被退去強制歴2回があり不許可でした。婚姻期間や在日期間の長さそれ自体は、素行面の消極要素を打ち消す力を持たないと考えられます。
弁護士のコメント
第1に、出頭申告という入り方です。自ら出頭すれば第2の9の積極要素が備わるうえ、身柄を拘束されないまま資料を整えられます。摘発や逮捕で発覚すれば、この二つを同時に失います。
第2に、立証を出す時期です。在留特別許可は、違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)、法務大臣への異議申出と進む手続の最後の段階の判断ですが、ガイドライン注4は退去強制令書発付後の事情変更を原則として考慮しないとしています。住民票や賃貸借契約、家計が一体であることを示す資料、母子健康手帳などは、違反審査の段階までに提出しておきたいものです。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋にとどまり、実際の許可件数のごく一部です。自分と同じ事情の許可例が見当たらないことは、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。
観光目的で来日された方が日本人女性との間にお子さんを授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、一旦不受理とされた婚姻と認知を憲法的観点から当局と交渉して成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
日本人配偶者との家族生活が実際に営まれている事案では、その実質を早い段階で記録として残しておくことが結果を左右いたします。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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