令和2年・不法就労助長と複数罪名で懲役1年2月・執行猶予3年、罰金60万円で不許可|日本社会に貢献したいという理由は積極要素とならなかった事例(D類型不許可第8事例)
2026/08/06
事例の概要
雇用する側の立場で在留を失った事例です。令和2年分事例集(出入国在留管理庁公表)のD類型(その他)不許可第8事例で、結論は不許可です。違反態様は不法就労助長および刑罰法令違反、端緒は警察の逮捕で、在日約11年10月です。違反期間の欄は原典で斜線が引かれています。刑事処分は、電磁的公正証書原本不実記録・同供用、道路運送法違反、入管法違反により懲役1年2月・執行猶予3年、罰金60万円の判決でした(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。在留希望の理由は、日本社会に貢献したいというものです。事例集は、事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせたと記します。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前の判断です。
- 消極要素・第2の3(イ):他の外国人の不法就労に関わる行為は、特に考慮する消極要素です。事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた行為はこの中核です。
- 消極要素・第2の6:不法就労助長行為には入管法24条3号の4に定めがあります。刑は全部執行猶予ですから24条4号リには当たりません。他の罪名がどの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。
- 消極要素・その他:複数の罪名が並ぶこと。
- 第2の9の出頭申告には当たりません(端緒は警察の逮捕)。
- 第2の3との関係:同項がいう「本邦への貢献」は、社会・経済・文化等の分野で不可欠な役割を担うことです。貢献したいという将来の意思の表明は当たりません。
結論を分けた一線はどこか
消極要素が複数積み上がり、積極要素として述べられたのは将来の意思のみでした。同年D類型の許可第3事例は、在日約22年・違反約16年という長期の不法在留がありながら、本国で治療が困難な病気にり患し自ら出頭したことにより特定活動(1年)が認められています。在日約11年10月という年月は、条項に載る積極要素の代わりになりません。何を積極要素として立てられるかが結論を分けたと読めます。
弁護士のコメント
刑事処分がある事例です。2点を述べます。
第1に、故意・過失要件論です。不法就労助長は、就労者の在留資格をどこまで確認したかが問題となる類型で、刑事事件であれば故意や過失が正面から争点になります。他方、入管実務では退去強制事由の判断に故意・過失を要件としない運用が踏襲されてきました。この当否は責任主義の射程をめぐる問題であり、当事務所はこの論点を問う訴訟を現に続けております。
第2に、不起訴処分の意味です。有罪の事実は第2の3(イ)の評価を裏付けます。刑事段階で不法就労助長の部分で不起訴処分を獲得できていれば、この評価を生じさせずに済んだ余地はあります。罪名が複数並ぶ事案では、どの部分を優先して争うかの判断が要点です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
不法就労助長は、公表事例では不許可が並ぶ類型です。もっとも事例集は各年20件前後の抜粋です。現に当事務所は、この類型の事案において在留特別許可を獲得しており、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。結果を保証するものではございませんが、傾向は出発点であって結論ではございません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
不法就労助長罪に問われ退去強制の危機に至った女性の事案では、退去強制事由に故意・過失は不要とする従来の実務を問い直し、責任主義および過失責任主義の射程を争う訴訟を現に続けております。この事案では在留特別許可を獲得しております。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者については、証拠の徹底した分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得いたしました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至りますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
複数の罪名が並ぶ事案では、どの部分を優先して争うかが在留の見通しを左右いたします。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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