令和2年・窃盗で懲役10月、同種の前科と被退去強制歴があり不許可|本国の子を呼び寄せたいという希望は積極要素とならなかった事例(D類型不許可第2事例)
2026/08/06
事例の概要
在留を求める理由の立て方が結果を左右しました。令和2年分事例集(出入国在留管理庁公表)のD類型(その他)不許可第2事例で、結論は不許可です。違反態様は不法残留、端緒は警察による逮捕で、在日約6年4月・違反約2年3月です。刑事処分は、窃盗により懲役10月の判決でした(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。在留希望の理由は、本国に住む外国籍を有する子どもを呼び寄せ、本邦の教育を受けさせたいというものです。事例集の特記事項には、窃盗と傷害による執行猶予の前科1件と被退去強制歴があることが記されています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前の判断です。
- 消極要素・第2の6:財産犯の有罪は反社会性の程度に応じて消極要素となります。もっとも入管法24条4号リが対象とするのは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者ですから、10月の刑は当たりません。違反態様は不法残留で、どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。
- 消極要素・その他:窃盗と傷害による執行猶予の前科1件、被退去強制歴。同種行為の繰り返しは素行の評価を下げます。
- 消極要素・第2の5:約2年3月の不法在留。
- 第2の9の出頭申告には当たりません(端緒は警察による逮捕)。
- 積極要素の当てはめ:第2の2(3)が積極要素とするのは、本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けた者とその監護養育者です。本国の子を呼び寄せて教育を受けさせたいという希望は、この要素に当たりません。
結論を分けた一線はどこか
ガイドラインの積極要素は、すでに本邦に生じている関係や積み上げた事情を対象とします。将来の希望を述べるだけでは天秤に載りません。同年D類型の許可第4事例は、幼少時に入国して本邦の教育機関で教育を受けている連れ子の事案で、教育の継続が評価され定住者(1年)が認められました。同じ「教育」の語を用いながら、すでに受けている教育の継続とこれからの希望とでは、位置づけが異なります。加えて本事例には前科と被退去強制歴がありました。
弁護士のコメント
刑事処分がある事例です。2点を述べます。
第1に、不起訴処分の意味です。窃盗で不起訴処分を獲得できていれば、素行に関する消極要素の一部は生じずに済んだ可能性があります。前科がある事案で不起訴を得るのは容易ではありませんが、だからこそ起訴前段階からの活動が要点です。断定はできませんが、執行猶予の獲得を最終目標に据える方針では在留は守れません。
第2に、主張の組み立て方です。在留を求める理由は、積極要素に対応する形で立てる必要があります。本邦での就労や納税、地域社会との関係、支援者の存在を示す方が、将来の希望より天秤に載りやすいところです。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集の掲載は各年20件前後で、その年の判断の全体でありません。同種の事情で不許可が並んでいても、主張と立証の組み方で評価が動くことがあります。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
特殊詐欺の受け子とされ複数回再逮捕された事案では、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議により、全件について不起訴処分を獲得いたしました。
観光目的で来日した相談者が在留資格を失った事案では、入管当局の過去の許可事例を分析して主張を組み立て、1回の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至りますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
在留を求める理由は、ガイドラインの評価要素に対応させて立てることが要点となります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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