令和2年・内縁の夫からのDVが原因で不法残留、自ら出頭して定住者(1年)|在日約11年2月・違反約2年で在留特別許可(D類型許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
在留資格を失った原因が、自分の選択ではなかった場合の事例です。令和2年分事例集(出入国在留管理庁公表)のD類型(その他)許可第1事例で、結論は許可です。違反態様は不法残留、端緒は出頭申告で、在日約11年2月・違反約2年です。刑事処分の欄は「無」で、被退去強制歴の記載はありません。在留希望の理由は、本邦に生活基盤があることでした。事例集の特記事項には、内縁の夫からのDVが原因で不法残留したものと記されています。被害の内容には立ち入りません。許可内容は定住者(1年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前の判断です。
- 積極要素・第2の9:自ら地方出入国在留管理官署に出頭して不法滞在を申告したこと。
- 積極要素・その他:約11年2月にわたる在留と、その間に築かれた生活の基盤。
- 積極要素・その他:違反状態が生じた原因が、滞在を続けるという本人の選択ではなく、置かれた状況にあったこと。第2の7が列挙する人道上の配慮(治療の必要性、本国情勢による帰国困難、無国籍)そのものには当たりませんが、帰責性を減じる事情として実質的に考慮されたと読めます。配偶者や内縁の相手からの暴力の被害者については、入管の運用上も別途の配慮が示されてきました。
- 消極要素・第2の5:約2年の不法在留。
- 消極要素・第2の6:不法残留。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。第2の3の素行不良の記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。本事例で天秤を傾けたのは、在留資格を失った経緯が本人の選択によるものではなかったこと、そして自ら出頭したことと読めます。同年D類型の不許可第4事例は、在日約22年1月と本事例より長く本邦で生活し、同じく本邦に生活基盤があることを理由に挙げましたが、端緒は職員探知で、被退去強制歴があり不許可でした。年月の長さではなく、在留を失った経緯と発覚に至る過程が結論を分けたと考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分の記載がない事例です。2点を述べます。
第1に、記録の確保です。暴力が背景にある事案では、公的機関への相談や保護の記録が経緯を裏付ける中心的な資料になります。相談の時期と内容が記録に残っているかどうかで、後の主張の重みが変わります。詳細を語ること自体が負担となる場面もあり、何をどこまで提出するかは代理人と相談しながら絞ります。
第2に、出頭の準備です。第2の9は自ら出頭したことを積極要素としますが、出頭は身柄の扱いや仮放免の見通しを含めて準備した上で行うべきものです。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しませんので、資料は出頭の前から整えます。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集の掲載は各年20件前後で、その年の許可の全体ではありません。同じ背景の許可例が見当たらないとしても、可能性がないことを示すものではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、当局から一旦不受理とされた婚姻・認知を憲法的観点からの交渉により成立させ、公的書類がほとんど得られない状況下でも有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得いたしました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至りますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標といたします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
在留資格を失った原因が自分の選択でなかった場合、その経緯を記録で示せるかが要点となります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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