令和2年・出頭申告・刑事処分なし・婚姻約2年1月でも不許可|被退去強制歴2回が決定的となった事例(A類型不許可第5事例)
2026/08/06
事例の概要
過去に2度の退去強制歴があると、その後の積極事情はどう評価されるのか。出入国在留管理庁が令和3年7月公表の令和2年分事例集のA類型(配偶者が日本人の場合)不許可第5事例が手がかりです。
違反態様は不法残留、端緒は出頭申告です。在日期間は約5年5月で、違反期間も約5年5月ですので、在留資格を有していた期間はありません。日本人配偶者との婚姻期間は約2年1月、夫婦間に子はありません。刑事処分はなく、事例集の特記事項には被退去強制歴が2回あると記載されています。
本件は令和5年改正入管法及び現行ガイドライン(令和6年3月改定)の適用前の判断です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の9(積極):不法滞在を申告するため自ら出頭したこと。この要素は本件にも備わっています。
- 第2の2(1)(ウ)(積極):日本人との法的な婚姻が約2年1月あります。もっとも夫婦間に子はなく、事例集は婚姻の実態について特に記載していません。
- 第2の5(消極):約5年5月の不法在留。明示的に消極要素と位置づけられたのは令和6年改定によるものです。
- 第2の6(消極):退去強制理由となった事実。被退去強制歴が2回あることは、違反を繰り返しているという評価に直結します。
結論を分けた一線はどこか
同年のA類型許可第2事例は、婚姻約1年4月で夫婦間に子もなく、婚姻期間は本件より短いものでした。それでも出頭申告と刑事処分のないことが評価され、許可されています。
違いは被退去強制歴の有無です。過去に退去強制を受けた者が再び入国して滞在するという経緯は、消極要素の中でも重く扱われる傾向が見て取れます。同じ出頭申告でも、それを支える事情の積み方によって結論が分かれると読めます。
弁護士のコメント
刑事処分がない事例ですので、初動と立証の在り方を中心に述べます。
第1に、出頭申告の準備です。出頭は退去強制手続の開始を意味します。過去の退去強制歴のように消せない消極事情がある事案では、出頭の前に、婚姻の実体、生計の状況、地域社会との関係を示す資料をどこまで揃えられるかが実質的な分岐点になります。何が必要かは事案ごとに異なります。
第2に、争う段階です。在留特別許可は、違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)、異議申出と進む手続の最後の判断です。ガイドライン注4は退去強制令書発付後の事情変更を原則として考慮しないとしていますので、婚姻の実態を裏付ける資料は違反審査の段階から提出しておきたいところです。加えて、過去の退去強制の経緯について、本人の帰責性の程度を丁寧に説明しておく必要があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集の掲載は各年20件前後の抜粋です。被退去強制歴のような重い消極事情があっても、可能性が閉ざされるとは限りません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。
国際的な刑事事件、裁判員裁判の対象事件、世界的に報道された事件への対応実績があり、中国籍の方の重大事件にも多数対応してきました。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、取調べへの対応を徹底し、不当な取調べには抗議を重ねて、全件について不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となるため、起訴前からの不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。接見の初動から公判の結審まで松村弁護士自身が全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐して、依頼者ご本人のために動く立場から通訳します。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応できます。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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