令和3年・脳疾患等の後遺症で出国が困難と認められ特定活動(6月)|療養のための在留特別許可(D類型許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
病気の療養のために在留を求める場合の見通しを示す事例です。令和3年分事例集(出入国在留管理庁が令和4年5月に公表)のD類型(その他)許可第1事例で、結論は許可でした。違反態様は不法残留、発覚の端緒は出頭申告で、在日約2年2月・違反約2年1月です。刑事処分はありません。在留希望の理由は病気療養のためというもので、特記事項には、脳疾患等による後遺症のため出国が困難であると認められるものと記載されています。許可内容は特定活動(6月)です。婚姻や子に関する記載はなく、病状の詳細も事例集には記載されていません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行前かつ改定前の判断です。
- 積極・第2の7(1):人道上の配慮。同項は本邦での治療の必要性等を挙げますが、本事例で記載されているのは後遺症により出国が困難であることです。同項の趣旨に沿う事情として評価されたと読めます。
- 積極・第2の9:自ら出頭したこと。
- 消極・第2の5:不法在留期間約2年1月。長期化が明示的な消極要素とされたのは令和6年改定です。
- 消極・第2の6:不法残留の事実。どの号に当たるかは条文で確認する必要があります。第2の3の素行不良に当たる記載はありません。
- 許可が特定活動(6月)と期間を限った資格である点は、事情が続く限りで在留を認める趣旨と読めます。
結論を分けた一線はどこか
天秤を傾けたのは、出国そのものが困難であるという身体の状況と、自ら出頭したことだと読めます。事情が一時的であることに対応して、在留資格も期間を限った特定活動(6月)が選ばれています。同年D類型の不許可第2事例は、不法入国後の在日約16年4月の全部が不法在留で、被退去強制歴があり、本邦に生活基盤があるという理由のみが記載されていました。人道上の配慮に当たる具体的な事情の有無が対照的です。
弁護士のコメント
刑事処分がありませんので、立証と手続の設計を中心に3点を申し上げます。
第1に、医学的な裏付けです。診断書、治療の経過、今後の見込み、渡航に耐えられるかどうかについての医師の所見が中心になります。求める在留の期間は、その見込みと整合させて示すのが筋です。
第2に、提出の時期です。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しません。違反審査の段階から医学的資料を出しておく必要があります。
第3に、許可後の見通しです。期間を限った資格ですから、事情が続く場合の更新と、事情が解消した場合の対応を、あらかじめ整理しておくことが望まれます。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集に掲載されるのは各年20件前後の抜粋であり、その年の判断の全体ではありません。健康上の事情による許可例が見当たらないとしても、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。もっとも、傾向を覆せるとお約束するものではございません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、当局から一旦不受理とされた婚姻と認知を憲法的観点からの交渉により成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。松村弁護士は、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
健康上の事情で出国が難しい場合、医学的な裏付けをどの段階で出すかが要点になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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