令和3年・2歳の子と共に不法残留、覚醒剤取締法違反で執行猶予でも不許可|入管法24条4号チの構造が結論を決めた事例(C類型不許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
子がいれば在留が認められるのか、という問いに一つの答えを与える事例です。令和3年分事例集のC類型(外国人家族の場合)不許可第1事例で、結論は不許可でした。本人の違反態様は薬物法令違反及び不法残留、発覚の端緒は警察逮捕で、在日約3年7月・違反約9月です。子が1人おり、同じく不法残留で在日約2年7月・違反約5月、2歳です(年齢は特別審理官の判定時のもの)。本人は覚醒剤取締法違反により懲役1年6月、執行猶予3年の判決を受けています(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。被退去強制歴の記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行前かつ改定前の判断です。
- 消極・第2の6:薬物法令違反。入管法24条4号チは薬物関係法令違反による有罪を退去強制事由とし、執行猶予であっても該当します。
- 消極・第2の9に当たらないこと:発覚は警察逮捕でした。
- 消極・第2の5:不法在留期間は約9月で、期間自体は短いものです。
- 積極・第2の2(3):子は2歳・在日約2年7月ですから、本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けた者には当たりません。監護養育者としての積極評価も、同項を通じては働きにくい構造です。
- 積極:家族とともに生活する子の利益の保護の必要性は考慮の対象になりますが、これが明示されたのは令和6年3月改定です。
結論を分けた一線はどこか
違反期間が約9月と短く、幼い子がいてもなお不許可です。天秤を戻したのは薬物法令違反による有罪であったと読めます。同年C類型の許可第1事例は、12歳の子2人を含む家族全員で出頭申告した事案で、家族4人に定住者(1年)が認められました。子の年齢と本邦で過ごした期間、発覚の端緒、素行の消極要素の有無が、正反対の結論をもたらしたと考えられます。
弁護士のコメント
第1に、この類型では刑事段階が事実上の勝負所です。4号チは執行猶予でも退去強制事由となりますから、執行猶予の獲得を最終目標に据える方針では在留の維持につながりません。起訴前に不起訴処分を獲得できていれば、退去強制事由該当性そのものを生じさせずに済んだ可能性がありました。
第2に、薬物事件では所持や使用についての認識が争点となり得ます。逮捕直後の72時間は勾留の判断までの分岐点であり、依頼者ご本人のために動く通訳を確保できるかどうかが供述の正確さを左右します。
第3に、幼い子がいる事案では第2の2(3)に乗りにくいため、監護養育の実体と子の利益を別途主張する必要があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表される事例は各年20件前後の抜粋であり、その年の判断の全体ではありません。薬物事件で在留が認められた例が公表事例に見当たらないとしても、それは可能性がないという意味ではありません。当事務所は、公表事例では不許可が並ぶ不法就労助長の類型で在留特別許可を獲得し、許可を得た後も違反認定処分そのものの取消しを争っております。結果をお約束できるものではございません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者の事案では、証拠の徹底した分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しております。裁判員裁判対象事件や報道された重大事件にも対応しております。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議により、全件不起訴処分を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。松村弁護士は、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
薬物事件では、刑事段階の方針設定がそのまま在留の帰趨を決めます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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