令和3年・窃盗未遂で懲役1年、婚姻約9年11月でも不許可|配偶者が永住者でも許可されなかった事例(B類型不許可第2事例)
2026/08/06
事例の概要
婚姻期間が10年近くあっても、不許可となった事例です。令和3年分事例集(出入国在留管理庁が令和4年5月公表)のB類型(配偶者が正規に在留する外国人の場合)不許可第2事例です。
違反態様は不法残留、端緒は警察逮捕です。在日期間は約10年10月、違反期間は約1年8月、婚姻期間は約9年11月で、夫婦間に子はありません。配偶者の在留資格は「永住者」です。刑事処分は、窃盗未遂により懲役1年の判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。特記事項として、配偶者に婚姻継続の意思がないこと、窃盗未遂による執行猶予の前科があることが記載されています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
現行ガイドライン(令和6年3月改定)に当てはめます。本件は令和5年改正入管法の施行前、かつ改定前の判断です。
- 家族関係・第2の2(2):配偶者の「永住者」は別表第二の在留資格ですが、同項が積極要素とするのは第2の2(1)に準じる家族関係です。配偶者に婚姻を続ける意思がない状況は、婚姻が安定かつ成熟しているという評価と両立しません。婚姻期間約9年11月という数字だけでは補えません。
- 消極・第2の6:財産犯による有罪判決と同種の前科。反社会性の程度に応じ消極要素となります。
- 消極:端緒が警察逮捕であるため、第2の9の出頭申告は働きません。
- 消極・第2の5:不法在留期間約1年8月。
結論を分けた一線はどこか
対比は同じ令和3年B類型の許可第2事例です。そちらは婚姻期間が約3年5月と本件よりはるかに短く、違反期間は約7年3月と本件より長いのに許可されました。端緒は出頭申告、刑事処分はなく、配偶者は「定住者」でした。
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可を検討するとします。本件との差は、婚姻期間の長短ではなく、婚姻関係が現に維持されているか、刑事処分と前科があるか、そして自ら出頭したかという3点にあったと読めます。長い婚姻期間は、それ自体で天秤を傾ける要素ではないと考えられます。
弁護士のコメント
第1に、刑期と条文の関係です。入管法24条4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を退去強制事由とし、全部執行猶予の場合を除きます。本件の刑は1年であり、「1年を超える」には当たりません。もっとも不法残留による退去強制事由が残り、有罪判決と前科は第2の6の消極要素として働きます。刑事段階で不起訴処分を獲得できていれば、この消極要素を生じさせずに済んだ余地はありました。財産犯では被害弁償や示談の成否が処分に影響します。
第2に、逮捕された段階での動きです。勾留の判断までの72時間で弁護人を選任し、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を確保することが出発点です。取調べでの供述は、刑事の公判と入管手続の双方に影響します。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋であり、その年の判断の全体像ではありません。似た事情の不許可例があることは、許可の可能性がないことの証明にはなりません。当事務所が担当した不法就労助長の事案では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議により、全件について不起訴処分を獲得しております。
在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された相談者の事案では、当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、過去の許可事例を分析することで在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、起訴前からの不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
財産犯の事案では、刑の重さだけでなく在留への影響を見据えた初動が必要でございます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------