令和3年・配偶者が永住者・未成年の子1人で在留特別許可|不法残留約5年3月・婚姻約2年2月・出頭申告の事例(B類型許可第3事例)
2026/08/06
事例の概要
婚姻期間が2年余りでも、夫婦間に子があり自ら出頭した事案で許可が出ています。令和3年分事例集(出入国在留管理庁が令和4年5月公表)のB類型(配偶者が正規に在留する外国人の場合)許可第3事例で、結論は許可、「永住者の配偶者等(1年)」が認められました。
違反態様は不法残留、端緒は出頭申告です。在日期間は約6年3月、違反期間は約5年3月、婚姻期間は約2年2月で、夫婦間に未成年の子が1人あります。配偶者の在留資格は「永住者」です。刑事処分はなく、被退去強制歴の記載もありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
現行ガイドライン(令和6年3月改定)に当てはめます。本件は令和5年改正入管法の施行前、かつ改定前の判断です。
- 積極・第2の2(2):別表第二の在留資格を有する者との家族関係で第2の2(1)に準じるもの。配偶者の「永住者」がこれに当たり、婚姻約2年2月と夫婦間の子が評価を支えます。配偶者が別表第一の在留資格である事案は、この積極要素に直接は当たりません。
- 積極・第2の9:不法滞在の事実を申告するため自ら出頭したこと。
- 積極・子の利益:本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性(令和6年改定で明示)。
- 消極・第2の5:不法在留期間約5年3月。
- 消極・第2の6:退去強制理由となった不法残留の事実。
素行不良(第2の3)を基礎づける記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
対比は同じ令和3年B類型の不許可第4事例です。そちらも夫婦間に未成年の子が1人あり、配偶者と子は「定住者」でしたが、不許可でした。端緒は警察逮捕で、覚醒剤取締法違反による有罪判決と窃盗による執行猶予の前科が記載されています。
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可を検討するとします。別表第二の配偶者と未成年の子という積極要素が同じように揃っていても、薬物法令違反という消極要素が加わると天秤は動きません。本件と不許可第4事例の差は、家族関係の厚みではなく素行にあったと読めます。
弁護士のコメント
第1に、出頭申告という入り方です。刑事処分のない事案では、争点は積極要素の立証に集まります。自ら出頭すれば第2の9が働き、資料を自分の手で整えてから手続に臨めます。逮捕による発覚では、この双方が失われます。出頭の時期と準備の程度は事前に検討しておきたい点です。
第2に、揃えておきたい資料です。配偶者の在留カードと在留資格を示す資料、住民票、母子健康手帳や保育・就学の記録、家計の一体性を示す記録などが典型です。もっとも、何が必要かは事案により異なりますので、一般的な解説として申し上げます。ガイドラインの注4により、退去強制令書の発付後の事情変更は原則として考慮されないため、違反審査の段階で出しておくことが大切です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集に掲載されるのは各年20件前後で、その年の判断の全体像ではありません。同じ組合せの許可例が見当たらないとしても、許可の可能性がないことにはなりません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された相談者の事案では、憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在等を主張し、不起訴処分を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、起訴前からの不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
子のいるご夫婦の事案では、生活の実体を示す記録を早い段階で整えることが結論を支えます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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