令和3年・配偶者が定住者で在留特別許可|不法残留約7年3月・配偶者に日本国籍の未成年実子がいた事例(B類型許可第2事例)
2026/08/06
事例の概要
7年を超える不法残留がありながら、定住者としての在留が認められた例です。令和3年分事例集(出入国在留管理庁が令和4年5月公表)のB類型(配偶者が正規に在留する外国人の場合)許可第2事例で、結論は許可、「定住者(1年)」が認められました。
違反態様は不法残留、端緒は出頭申告です。在日期間は約10年3月、違反期間は約7年3月、婚姻期間は約3年5月で、夫婦間に子はありません。配偶者の在留資格は「定住者」で、配偶者には日本国籍を有する未成年の実子があると記載されています。刑事処分はなく、被退去強制歴の記載もありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
現行ガイドライン(令和6年3月改定)に当てはめます。本件は令和5年改正入管法の施行前、かつ改定前の判断です。
- 積極・第2の2(2):別表第二の在留資格を有する者との家族関係で第2の2(1)に準じるもの。配偶者の「定住者」は別表第二であり、婚姻約3年5月がこの評価を支えます。配偶者が別表第一の在留資格である事案は、この積極要素に直接は当たりません。
- 積極・第2の9:不法滞在の事実を申告するため自ら出頭したこと。
- 積極・子の利益:配偶者の実子は日本国籍を有する未成年者です。本人と当該子との続柄は事例集の記載からは判明しませんが、家族が本邦で共に生活するという子の利益は、令和6年改定で明示された積極要素にあたります。
- 消極・第2の5:不法在留期間約7年3月。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定です。
結論を分けた一線はどこか
対比は同じ令和3年B類型の不許可第2事例です。そちらは婚姻期間が約9年11月と本件よりはるかに長く、配偶者も永住者でしたが、不許可でした。端緒が警察逮捕で、窃盗未遂による有罪判決と同種の前科があり、配偶者に婚姻継続の意思がない旨が記載されています。
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可を検討するとします。両者を並べると、婚姻期間の数字そのものではなく、婚姻関係が現に続いているか、そして刑事処分による消極要素があるかが結論を分けたと読めます。
弁護士のコメント
第1に、家族関係の立証の組み立てです。本件では、配偶者が別表第二の在留資格を有すること、その配偶者に日本国籍の未成年の実子があることが、家族としての生活の基盤を示す事情として働いています。配偶者の在留カード、住民票、子の在籍や健診の記録などを一体の資料群として整えることが考えられます。何が必要かは事案により異なります。
第2に、7年を超える不法在留の位置づけです。令和6年3月改定により長期化は明示的な消極要素となりましたが、その間に築いた地域社会との関係や納税の状況は別途積極要素として考慮される余地が残ります。同種の事情が現在どう評価されるかは、改定後の運用を踏まえて検討する必要があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集はその年に判断された事案の一部を抜粋したものにすぎません。似た組合せの許可例が見当たらないことは、許可の可能性がないことの証明にはなりません。当事務所が担当した不法就労助長の事案では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
不法就労助長罪に問われて強制退去の危機に直面した女性の事案では、退去強制事由に故意・過失を要しないとしてきた実務の当否を問う訴訟を進めております。この事件では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、起訴前からの不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
婚姻期間の長さよりも、その関係が今も続いているかどうかが問われる場面がございます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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