令和3年・売春の周旋に関する有罪判決で不許可|在日約23年10月・婚姻約2年2月でも許可されなかった事例(A類型不許可第4事例)
2026/08/06
事例の概要
在日期間が20年を超えていても、結論が変わらなかった事例です。令和3年分事例集(出入国在留管理庁が令和4年5月公表)のA類型(配偶者が日本人)不許可第4事例です。
違反態様は売春周旋及び不法残留、端緒は警察逮捕です。在日期間は約23年10月に及びますが、違反期間は約8月です。婚姻期間は約2年2月で、夫婦間に子はありません。刑事処分は、売春防止法違反により懲役2年、執行猶予3年の判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。特記事項として、賭博による罰金の前科があると記載されています。事例集の記載は簡潔であり、本記事もその範囲を超えて立ち入りません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
現行ガイドライン(令和6年3月改定)に当てはめます。本件は令和5年改正入管法の施行前、かつ改定前の判断です。
- 消極・第2の3(エ):自ら売春を行い、又は他人に売春を行わせる等、社会秩序を著しく乱す行為。周旋はここに位置づけられます。
- 消極・第2の6:退去強制理由となった事実の反社会性。別の罪名による前科も併せて評価されます。
- 消極:端緒が警察逮捕であるため、第2の9の出頭申告は働きません。
- 積極・第2の2(1)(ウ):婚姻約2年2月。約23年10月の在日による生活基盤も、地域社会との関係として考慮の対象になり得ます。
結論を分けた一線はどこか
対比は同じ令和3年A類型の許可第4事例です。そちらは在日約11年9月で本件より短く、違反態様は不法入国、違反期間も約11年9月と長く、婚姻期間は約3年9月で子はありませんが、許可されています。端緒は出頭申告で、刑事処分はありません。
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可を検討するとします。両者の差は期間ではなく、第2の3(エ)にあたる素行の消極要素と刑事処分の存在でした。長い在日による生活基盤は、この消極要素を上回るには足りなかったと読めます。
弁護士のコメント
第1に、刑の種類だけでは判断できません。本件の刑は全部執行猶予付きで、入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑)には当たりません。もっとも入管法24条は、売春に直接関係する業務に従事した場合について、刑に処せられたことを要件としない退去強制事由も定めています。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。刑事段階で不起訴処分を獲得できていれば結果が変わった余地はありますが、刑罰を前提としない号との関係では、不起訴だけで問題が解消するとは限りません。
第2に、争う段階です。長期の在日を積極要素として組み立てるのであれば、地域社会との関係、納税の状況、第三者による支援などを違反審査の段階で示しておく必要があります。ガイドラインの注4により、令書発付後の事情変更は原則として考慮されません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋であり、その年の判断の全体像ではありません。同じ類型の許可例が見当たらないことは、可能性がない証明にはなりません。当事務所が担当した不法就労助長の事案では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
国際的な刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された事件への対応実績があり、中国籍の方の重大事件にも多数対応してまいりました。
不法就労助長罪に問われて強制退去の危機に直面した女性の事案では、退去強制事由に故意・過失を要しないとしてきた実務の当否を問う訴訟を進めております。この事件では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、起訴前からの不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
刑の重さや在日期間の長さだけでは在留の見通しは決まらず、罪名ごとの条文の構造を踏まえた検討が必要でございます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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