令和3年・麻薬及び向精神薬取締法違反で執行猶予でも不許可|婚姻約3年8月・配偶者と離婚協議中だった事例(A類型不許可第3事例)
2026/08/06
事例の概要
執行猶予でも在留は守られないという構造が現れた事例です。令和3年分事例集(出入国在留管理庁が令和4年5月公表)のA類型(配偶者が日本人の場合)不許可第3事例です。
違反態様は薬物法令違反及び不法残留、端緒は警察逮捕です。在日期間は約8年6月、違反期間は約11月、婚姻期間は約3年8月で、夫婦間に子はありません。刑事処分は、麻薬及び向精神薬取締法違反により懲役1年6月、執行猶予3年の判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。特記事項として、配偶者と離婚協議中であると記載されています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
現行ガイドライン(令和6年3月改定)に当てはめます。本件は令和5年改正入管法の施行前、かつ改定前の判断です。
- 消極・第2の6:薬物法令違反の反社会性。入管法24条4号チは薬物関係法令違反による有罪を退去強制事由とし、執行猶予が付いた場合も除外されません。
- 消極:端緒が警察逮捕であるため、第2の9の出頭申告は働きません。
- 消極・第2の5:不法在留期間約11月。期間自体は長くありません。
- 家族関係・第2の2(1)(ウ):婚姻約3年8月という期間はありますが、離婚協議中であることは、婚姻が安定かつ成熟しているという評価と両立しません。
結論を分けた一線はどこか
対比は同じ令和3年A類型の許可第3事例です。そちらは違反期間が約7年3月と本件よりはるかに長いのに許可されています。婚姻期間は約8年7月で未成年の子が1人あり、端緒は出頭申告、刑事処分はありません。
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可を検討するとします。本件は違反期間が約11月と短いにもかかわらず不許可であり、薬物法令違反という消極要素の重さと、家族関係の積極要素が離婚協議によって失われつつあったことが重なったと読めます。
弁護士のコメント
第1に、不起訴処分の意味です。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とし全部執行猶予を除きますが、薬物関係法令違反には4号チが別に定められ、執行猶予でも退去強制事由となります。執行猶予の獲得を目標にしても在留の問題は残るのです。刑事段階で不起訴処分を獲得できていれば、退去強制事由該当性そのものを生じさせずに済んだ可能性がありました。
第2に、故意の問題です。所持や使用を認識していたか、預かった物の中身を知らなかったのではないか。薬物事件では認識の有無が中心の争点になります。他方、入管実務は退去強制事由の判断に故意・過失を要しない運用を長年踏襲してきました。松村大介弁護士はこの当否を問う訴訟を現に係争中で、結論を先取りできる論点ではありません。刑事段階から認識を争うことが、後の主張の土台になります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋にとどまります。薬物事件の不許可例が並ぶことは、あらゆる事案で許可の余地がないという意味ではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者の事案では、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により、無罪判決を獲得しております。裁判員裁判対象事件や報道された事件にも対応してまいりました。
在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された相談者の事案では、当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、過去の許可事例を分析することで在留特別許可を獲得しております。
薬物事件では執行猶予でも退去強制事由が残るため、起訴前からの不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
薬物事件では、執行猶予を得ることと在留を守ることが別の問題であるという前提が出発点でございます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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