令和4年・在留特別許可歴のある日系二世が執行猶予期間中に覚醒剤密輸未遂に関与して不許可(D類型不許可第5事例)
2026/08/06
事例の概要
令和4年分事例集のD類型(その他)不許可第5事例です。結論は不許可でした。発覚の端緒は警察逮捕で、違反態様は薬物法令違反および刑罰法令違反です。在日約18年8月、違反期間は不法残留について約3年7月です。刑事処分は、覚醒剤取締法違反・関税法違反により懲役2年6月の判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。不許可の理由として記載された事情は、日系二世であること、在留特別許可歴があること、薬物法令違反による執行猶予期間中に覚醒剤の密輸未遂事件に関与したこと、在留希望の理由が本邦の生活基盤であったことです。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
消極要素は次のとおりです。
- 第2の6:退去強制理由となった事実の反社会性。薬物の密輸に関わる事案であり、しかも執行猶予期間中の関与です。
- 第2の3:素行が善良でないと評価される事情。
- 第2の5:約3年7月の不法在留期間。
- 在留特別許可歴。一度許可を受けた後に再び退去強制事由に該当したという経緯は、第2の6の評価で不利に働きます。
- 警察逮捕による発覚であり、第2の9の「自ら出頭したこと」に当たりません。
積極要素は、日系二世としての身分関係と約18年8月の在留による生活基盤にとどまります。本件は令和5年改正入管法およびガイドライン改定の前の判断です。
結論を分けた一線はどこか
同じ令和4年D類型の許可第3事例は、日系4世として入国した方が、違反期間約4月の段階で自ら出頭して定住者(1年)を得たものでした。日系という血縁的なつながりは両者に共通しますが、本件では薬物の密輸に関わる事案であり、しかも在留特別許可を受けた後の再度の違反です。身分関係の有利さだけでは天秤は傾かず、素行と違反の反社会性が結論を分けたと読めます。在留特別許可歴があることは、次の判断で一層厳しく評価されると読めます。
弁護士のコメント
第1に、薬物事件の構造です。入管法24条4号チは、薬物関係法令違反による有罪を実刑か執行猶予かを問わず退去強制事由としています。本件では、先行する薬物事件で執行猶予付き判決を受けた時点で既に同号に該当していたことになり、その段階で不起訴処分を獲得できていれば、その後の経過は異なった余地があると考えられます。断定はできませんが、薬物事件で執行猶予を最終目標に置く発想の限界を示します。第2に、一度在留特別許可を受けた方の場合、次の許可は一層難しくなります。許可後は、更新や在留資格該当性の維持について継続的な助言を受けることが望ましいと考えられます。第3に、密輸に関わる事案では、認識の内容と役割の限定を早期に主張する必要があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表されている事例はその年の判断のごく一部です。当事務所は、公表事例では不許可が並ぶ不法就労助長の類型で在留特別許可を獲得しており、許可を得た後も違反認定処分そのものの取消しを争っております。もっとも、薬物の密輸と在留特別許可歴が重なる事案は消極要素が極めて重く、結果をお約束できるものではございません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
薬物事件では、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の精査と反対尋問を重ねて無罪判決を獲得した実績があり、量刑のみならず在留への影響を見据えて弁護にあたっております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。
松村弁護士は、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
薬物事件では、最初の事件の段階での処分の内容が、その後の在留の帰趨を大きく左右いたします。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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