令和4年・自ら出頭し配偶者が永住者でも不許可|不法残留4年10月・無免許運転などで執行猶予付き判決を受けた事例(B類型不許可第4事例)
2026/08/06
事例の概要
積極要素が2つ揃っても許可に至らなかった事例です。出入国在留管理庁公表の令和4年分事例集のB類型(配偶者が正規在留外国人)不許可第4事例です。違反態様は不法残留、端緒は出頭申告です。在日期間は約5年、違反期間は約4年10月、婚姻期間は約1年10月、夫婦間の子はなく、配偶者は在留資格「永住者」です。刑事処分は入管法違反及び道交法違反(無免許運転)により懲役2年、執行猶予3年です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。事例集が挙げるのは配偶者が永住者である点で、被退去強制歴の記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
現行ガイドライン(令和6年3月改定)に当てはめます。
- 積極・第2の2(2):配偶者の「永住者」は別表第二の在留資格で、これとの家族関係は特に考慮する積極要素です。もっとも婚姻約1年10月で子はなく、第2の2(1)に準じる関係の裏付けは厚くありません。
- 積極・第2の9:自ら出頭した点。
- 消極・第2の5:不法在留期間約4年10月。令和6年改定で明示的な消極要素とされました。
- 消極・第2の6:不法残留(24条4号ロ)に加え、無免許運転を含む刑罰法令違反。
本件は令和5年改正入管法の施行前、かつガイドライン改定前の判断です。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。対比は同年B類型の許可第2事例です。そちらも出頭申告で、配偶者は定住者、違反期間は約3年11月と本件に近い一方、夫婦間に未成年の子1人があり、刑事処分はありませんでした。本件は出頭申告と別表第二の配偶者を備えながら、子がなく刑事処分があるという2点で結論が分かれたと読めます。積極要素の数ではなく、その厚みと消極要素との釣り合いで判断されていると考えられます。
弁護士のコメント
第1に、刑事処分の位置づけです。執行猶予が付いた本件は、入管法24条4号リが定める無期又は1年を超える拘禁刑には当たりません。もっとも不法残留(同条4号ロ)があるため、刑事処分を不起訴にできても退去強制事由そのものは残ります。とはいえ刑事処分の有無は第2の6の評価に直結し、不起訴を得ていれば消極要素が1つ減っていた可能性はあります。第2に、無免許運転は免許の有効性の認識が事実上の争点になり得る類型です。入管実務では退去強制事由の判断に故意・過失を要しない運用が続き、松村大介弁護士はその当否を問う訴訟を係争中です。第3に、婚姻期間が短く子がない事案では、同居と家計の一体性を示す資料を違反審査と口頭審理までに揃えるべきです。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集に載るのは各年20件前後で、その年の許可事案の全部ではありません。自分の類型の許可例が見当たらなくても、そこで結論を決める必要はありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例で不許可が続く類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。同じ結果をお約束するものではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在等を主張し、不起訴処分を獲得しております。
在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された相談者の事案では、交渉によって婚姻・認知を成立させ、過去の許可事例を分析して1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
当事務所は、不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
出頭申告という有利な事情があっても、刑事処分が加われば見通しは変わります。刑事と入管を一体で設計することが大切です。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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