令和4年・有印公文書偽造で執行猶予付き判決を受け不許可|婚姻5年4月・未成年の子1人でも配偶者が「特定活動」だった事例(B類型不許可第3事例)
2026/08/06
事例の概要
婚姻期間も子もある一方、公文書の偽造が問題となった事例です。出入国在留管理庁公表の令和4年分事例集のB類型(配偶者が正規在留外国人)不許可第3事例です。違反態様は刑罰法令違反、端緒は警察逮捕。在日期間は約12年11月、婚姻期間は約5年4月、夫婦間に未成年の子1人、違反期間の欄は原文で斜線です。刑事処分は有印公文書偽造により懲役2年、執行猶予3年の判決でした(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。事例集が挙げるのは配偶者が在留資格「特定活動」である点で、本人の在留資格は判明しません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
現行ガイドライン(令和6年3月改定)に当てはめます。
- 積極:婚姻期間約5年4月は共同生活の相当期間性を支え、未成年の子もあります。令和6年改定で明示された子の利益の保護の必要性も働きます。
- もっとも第2の2(2)が特に考慮するのは別表第二の在留資格者との家族関係です。配偶者の「特定活動」は別表第一ですから、直接には当たりません。
- 消極・第2の6:公文書の偽造という退去強制理由の反社会性。第2の3(ウ)は在留カード等の偽変造を挙げますが、本件がこれに当たるかは事例集から判明せず、公的書類への信頼を害する行為として重くみられたと読めます。
- 消極:端緒は警察逮捕で、第2の9の出頭申告は働きません。
本件は令和5年改正入管法の施行前の判断です。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。対比は令和4年B類型の許可第4事例です。そちらも配偶者は別表第一の「留学」、婚姻約1年6月、子もなかったものの、違反は不法残留のみ、違反期間約5月で、自ら出頭して許可されました。本件は婚姻期間と子という積極要素を備えながら、刑罰法令違反が加わって天秤が戻りました。家族関係の厚みが刑事処分の重さを打ち消すわけではないと読めます。
弁護士のコメント
第1に、刑事処分の位置づけです。執行猶予が付いた本件は、入管法24条4号リの無期又は1年を超える拘禁刑には当たりません。どの退去強制事由に該当するとされたかは事例集から判明しませんが、刑事処分の内容が評価に直結する構造は変わらず、不起訴を得ていれば消極要素の中心が生じなかった余地があります。第2に、文書偽造の事案では、偽造であることの認識、すなわち故意の有無が争点になり得ます。入管実務では退去強制事由の判断に故意・過失を要しない運用が続き、松村大介弁護士はその当否を問う訴訟を係争中です。刑事段階で認識を争うことが後の主張の基礎になります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例は、その年の事案から20件前後を抜いたものにすぎません。同じ組合せの許可例が見えないことは、結論の先取りにはなりません。当事務所が扱った不法就労助長の事案では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っております。もとより、傾向を覆せると保証できる性質のものではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
特殊詐欺の受け子で複数回再逮捕された事案では、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議により、全件について不起訴処分を獲得しております。
在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された相談者の事案では、交渉によって婚姻・認知を成立させ、過去の許可事例を分析して1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
当事務所は、不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
文書に関する罪では、偽造であることの認識をどこまで争えたかが、在留の見通しに影響いたします。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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