令和4年・不法残留3年11月でも在留特別許可|配偶者が定住者・未成年の子1人で出頭申告し定住者(1年)を得た事例(B類型許可第2事例)
2026/08/06
事例の概要
在留期限が切れてから4年近く経った後の出頭でも、許可が出ています。出入国在留管理庁公表の令和4年分事例集のB類型(配偶者が正規在留外国人の場合)許可第2事例で、結論は許可、在留資格「定住者」(1年)が認められました。違反態様は不法残留、端緒は出頭申告です。在日期間は約4年、違反期間は約3年11月で、入国後まもなく不法残留になったと読めます。婚姻期間は約1年6月、夫婦間に未成年の子1人があり、配偶者は在留資格「定住者」です。刑事処分はなく、被退去強制歴の記載もありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
現行ガイドライン(令和6年3月改定)に当てはめます。
- 積極・第2の2(2):配偶者の「定住者」は別表第二の在留資格であり、これとの家族関係が特に考慮する積極要素とされます。夫婦間に未成年の子があることがこれを支えます。
- 積極・子の利益:令和6年改定で明示された、家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性。
- 積極・第2の9:自ら出頭したこと。
- 消極・第2の5:不法在留期間約3年11月。改定前は積極にも消極にもなり得るとされましたが、令和6年改定で明示的な消極要素とされ、同じ事情で現在申請すれば評価は厳しくなり得ます。
- 消極・第2の6:不法残留(入管法24条4号ロ)。
本件は令和5年改正入管法の施行前の判断です。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。対比すべきは同じ令和4年B類型の不許可第4事例です。そちらも出頭申告で、配偶者は永住者、違反期間は約4年10月と本件に近いのですが、夫婦間の子がなく、入管法違反と無免許運転で執行猶予付きの有罪判決を受けていました。出頭申告と別表第二の配偶者という2つの積極要素が揃っていても、子の有無と刑事処分の有無で結論が分かれると読めます。
弁護士のコメント
第1に、立証の順序です。在留特別許可は異議申出の段階の判断ですが、そこから準備を始めるのでは遅くなります。違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)で提出した資料が判断の土台となり、注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しないとしています。第2に、配偶者が別表第二の在留資格を持つ場合は、その事実を早い段階で明確に示すことが要になります。配偶者の在留カード、在留資格の変遷、就労や収入の状況は、家族としての生活の安定を示す資料でもあります。第3に、不法在留の期間が長い場合は、その期間に築いた地域社会との関係、子の在園・在学の状況、納税の状況を並べる準備が必要です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例は、その年に扱われた事案から20件前後を抜き出したものにすぎません。公表資料に自分と同じ組合せの許可例がないことは、結論の先取りにはなりません。当事務所が扱った不法就労助長の事案では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分そのものの取消しを争っております。もとより、傾向を覆せると保証できる性質のものではございません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された相談者の事案では、交渉によって婚姻・認知を成立させ、過去の許可事例を分析して1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
また、不法就労助長罪に問われて強制退去の危機に直面した女性の事案では、退去強制事由に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を問う訴訟を進めております。
当事務所は、不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
不法在留の期間が延びた事案では、期間の長さを補う積極要素を出頭の前に形にしておくことが結論を左右いたします。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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