令和4年・不法入国から10年6月でも在留特別許可|日本人配偶者と婚姻2年9月・未成年の子1人で出頭申告した事例(A類型許可第4事例)
2026/08/06
事例の概要
日本にいた期間の全部が違反期間であった不法入国の事案です。出入国在留管理庁が公表した令和4年分事例集のA類型(配偶者が日本人の場合)許可第4事例で、結論は許可、在留資格「日本人の配偶者等」(1年)が認められました。端緒は出頭申告です。在日期間は約10年6月、違反期間も同じ約10年6月でした。婚姻期間は約2年9月、夫婦間に未成年の子1人があります。配偶者は日本人で、刑事処分はなく、被退去強制歴と属性の記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
現行ガイドライン(令和6年3月改定)に当てはめます。
- 積極・第2の2(1):日本人と法的に婚姻し、夫婦間に子があります。婚姻期間約2年9月は共同生活の相当期間性を支えます。
- 積極・子の利益:令和6年改定で明示された、家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性。
- 積極・第2の9:自ら官署に出頭したこと。
- 消極・第2の5:不法在留期間約10年6月という長期。改定前は積極にも消極にもなり得るとされていましたが、令和6年改定で明示的な消極要素とされ、同じ事情で現在申請すれば評価は従前より厳しくなり得ます。
- 消極・第2の6:不法入国(入管法24条1号)は、在留期限を過ぎた不法残留よりも反社会性を重くみられやすい態様です。
本件は令和5年改正入管法の施行前の判断です。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。本件で天秤を傾けたのは、日本人配偶者と子という家族関係があり、10年余りを経ても自ら出頭したことだと読めます。対比すべきは同じ令和4年A類型の不許可第4事例です。あちらも不法入国ですが、ブローカーを介して入手した他人名義の旅券を行使し、被退去強制歴があり、警察に逮捕されて発覚し、子もありませんでした。入口が同じでも、入国の手段、発覚の端緒、家族関係の有無で結論が分かれていると考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分のない事案ですが、注意すべき点が2つあります。第1に、不法入国の事案では身分関係の立証が難しくなります。正規の入国記録がなく、本国発行の公的書類も揃わないことが多いためです。婚姻や子との関係、生活の連続性を間接的な資料の積み上げで示す作業が必要になります。第2に、その作業は違反審査と口頭審理の段階で終えておくべきです。ガイドラインの注4は、令書発付後の事情変更を原則として考慮しないとしています。あわせて、在留が長い方は、その期間に築いた地域社会との関係や納税の状況を積極要素として並べて示す準備が要ります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋であり、許可の全体像を示すものではありません。公表資料に同種の許可例が見えないことは、立証の工夫の余地がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争い続けております。もっとも、傾向を覆せると申し上げる趣旨ではございません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知が未了として一旦受理されなかったところ、交渉によって婚姻・認知を成立させました。国籍国が発行する公的書類がほとんど存在しない状況でも有利な証拠を集め、過去の許可事例を分析して1度の申請で在留特別許可を獲得しております。本記事の事例と同じく、書類が揃わない困難を抱えた事案です。
当事務所は、不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えております。多くの罪名では、執行猶予判決を得ても結果として退去強制に至るためです。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
不法入国の事案では、書類の不足を間接的な資料でどこまで埋められるかが結論を左右いたします。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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