令和5年・覚醒剤取締法違反と窃盗で実刑3年2月、在日20年8月の永住者でも不許可(D類型不許可第5事例)
2026/08/06
事例の概要
薬物事件で実刑となった場合、永住者であっても在留は厳しく判断されます。令和5年分の事例集(出入国在留管理庁公表)のうち、D類型(その他)の不許可第5事例を取り上げます。本人は永住者で、在日期間は約20年8月。違反態様は薬物法令違反、発覚の端緒は警察逮捕です。刑事処分は、覚醒剤取締法違反、窃盗により懲役3年2月の実刑判決で、ほかに前科1件があります(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。在留希望の理由は家族との同居の継続と生活基盤です。家族の具体的な構成は、記載からは判明しません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は、改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 消極要素・第2の6:薬物関係法令違反による有罪は入管法24条4号チに当たり、執行猶予でも該当します。本事例は実刑で刑期が1年を超えるため、入管法24条4号リにも当たります。窃盗が併せて認定されている点も不利に働きます。
- 消極要素:前科1件。行為の繰り返しは更生の見込みの評価に影響します。
- 出頭申告(第2の9)には当たりません。
- 積極要素・その他:在日約20年8月の生活基盤と永住者としての地位。在留希望の理由から家族関係に関わる事情もあったとうかがわれますが、内容は判明しません。
改正入管法50条1項ただし書により、1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた者は、人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がある場合に限り許可されます。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。本事例では、20年を超える生活基盤があっても、1年を超える実刑、前科、薬物と財産犯の重なりを上回るとは評価されなかったと読めます。同じ令和5年のD類型許可第7事例は、複数の罪名で有罪となった永住者でしたが、刑がすべて執行猶予にとどまり、日本人内妻とともに日本人である実子を監護養育していたため許可されています。罪名の数ではなく、実刑か執行猶予か、日本国籍の子を現に養育しているかが分かれ目と読めます。
弁護士のコメント
2点を申し上げます。
第1に、刑事段階での目標設定です。薬物事件では、有罪となれば入管法24条4号チにより執行猶予でも退去強制事由となり、実刑で刑期が1年を超えれば同号リにも重なります。仮に不起訴処分を得られていれば、これらの号の該当性そのものを生じさせずに済んだ可能性があります。断定はできませんが、起訴前段階から所持や使用の事実、認識の有無を徹底して争う意味は大きいところです。
第2に、家族関係の立証です。家族の在留資格、同居の実際、扶養の状況を客観資料で示す必要があります。身柄拘束中の面会や手紙の記録も関係の継続を示す資料になり得ます。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しませんから、収集は早いほど有利です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋であり、その年の許可の全部ではありません。近い事情の許可例がないことは、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。傾向は出発点であって結論ではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者の事案では、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。裁判員裁判対象事件や報道された重大事件にも対応しています。薬物事件では、事実そのものを争う場面の密度が在留の帰結まで左右します。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
薬物事件では、逮捕直後の対応が刑事と入管の双方の結論を決めていきます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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