令和5年・永住者が事業活動で外国人を不法就労させ不許可|刑事処分がなく在日20年7月でも許可されなかった事例(D類型不許可第4事例)
2026/08/06
事例の概要
自分の店や会社で働いてもらっていた外国人に就労資格がなかった。この一点で、20年を超えて日本で暮らしてきた永住者の在留が失われることがあります。令和5年分の事例集(出入国在留管理庁公表)のうち、D類型(その他)の不許可第4事例です。本人は永住者で、在日期間は約20年7月。違反態様は不法就労助長、発覚の端緒は摘発です。事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせたと記載されています。在留希望の理由は日本に生活基盤があることです。刑事処分はありません。家族関係については、記載からは判明しません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は、改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 消極要素・第2の3(イ):他の外国人の不法就労や在留資格の偽装に関わる行為。事業活動に関して外国人に不法就労活動をさせた点が正面から当たります。
- 消極要素・第2の6:ただ、刑事処分がない本事例でどの号への該当が認定されたのかは判明しません。
- 出頭申告(第2の9)には当たりません(端緒は摘発)。
- 積極要素・その他:在日約20年7月の生活基盤と永住者としての地位。
- 第2の2の家族関係、第2の7の人道上の配慮に当たる事情は、いずれも記載からは判明しません。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。本事例では、20年を超える生活基盤と永住者としての地位があっても、第2の3(イ)の消極要素を明らかに上回るとは評価されなかったと読めます。同じ令和5年のA類型許可第3事例は、同じく不法就労助長で摘発を端緒とし、刑事処分もありませんでしたが許可されました。そちらは在留資格「日本人の配偶者等」で、日本人配偶者との婚姻期間が約1年11月あり、未成年の子が1人いました。日本人配偶者と未成年の子という家族関係の積極要素が備わっていたかどうかが、結論を分けたと読めます。
弁護士のコメント
刑事処分はありません。2点を挙げます。
第1に、退去強制事由の判断における故意・過失の位置づけです。不法就労助長は、この点が問題になりやすい類型です。就労資格を確認したつもりが在留カードの偽造を見抜けなかった場合など、認識の程度は事案によって大きく異なります。入管実務では退去強制事由の判断に故意・過失を要件としない運用が長年踏襲されてきましたが、その当否は責任主義の射程に関わる問題であり、松村大介弁護士が現に訴訟で問うている論点です。断定できる段階ではありませんが、争い方の余地は残されています。
第2に、用意すべき資料です。採用時に在留カードや資格外活動許可を確認した記録、雇用契約書、就労時間の管理記録、確認手順を定めた社内の書面などを集め、確認義務を尽くしていた経緯を具体的に示すのが要点です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
不法就労助長は、公表事例では不許可が並ぶ類型です。ただ、事例集は各年20件前後の抜粋にとどまります。現に当事務所が担当した不法就労助長の事案では在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っています。傾向は出発点であって結論ではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に至った女性の事案では、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を正面から問う訴訟を提起し、現に係争中です。公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら、この事案では在留特別許可を得ています。本記事の類型に最も近い経験です。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
外国人を雇う立場の方は、確認の手順を記録に残しておくことが、後の入管手続での主張の土台になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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